日本の経常黒字、過去最少…最盛期の10分の1以下に 原発停止だけではない背景を海外紙分析

 財務省は12日、2013年度の国際収支状況を発表した。海外との取引状況を示す経常収支の黒字額は7899億円で、比較可能な1985年以降で過去最少となった。また併せて発表された2014年3月の国際収支は1164億円の黒字で、こちらも前年同月と比べて1兆円以上減少した。

【輸入急騰 円安促進が仇に】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、アベノミクスの一部として促進された円安が、輸出の促進につながらず、エネルギー輸入の支出を増やしただけという結果をもたらしたことに、首相自身が驚いたことだろう、と伝えている。
 
 かつて貿易黒字国だった日本だが、2011年、急激に風向きが変わった。福島第一原発の事故を受け、国内の全原発を停止。エネルギー輸入の急増につながった、と同紙は指摘する。さらに、日本メーカー生産拠点の海外シフトも事態を悪化させているという。

 また3月の黒字幅減少について、ロイターは、消費増税前の需要が高まったことによる輸入急騰が原因、との指摘をしている。3月、輸入は前年比23.2%増だったが、一方の輸出は6.2%のみの増加にとどまっている。一部の企業は、増税前に跳ね上がった国内需要の対応で手一杯となり、輸出まで手が回らなかったという。

【輸入>輸出はこの先も続く?】
 原発停止による燃料輸入の増加や、増税前の駆け込み需要が貿易赤字の原因ならば、それらが解消されれば日本はかつての貿易黒字国に戻れるのだろうか。残念ながら、ウォール・ストリート・ジャーナル紙はそうは見ていないようだ。

 同紙によると、クレディ・スイスのエコノミストは、今回の財務省発表について「増税後の4月に入ってもまだ輸入増加が見られるのは、もはや現象が一時的なものではないことを表している」と語り、この傾向がこの先も続くとの分析をしている。さらに「他の収支の黒字が貿易収支の悪化を相殺するのに十分なペースで拡大すればいいと期待する向きもあるだろうが、世界経済が減退傾向にあることを考えるとそれも難しいだろう」とも指摘する。

 またロイターによると、三井住友アセットマネジメントの武藤弘明氏も「経常収支の黒字は次の4半期に安定させられるかもしれないが、それでも輸出は低迷し続ける可能性が高い。ならば内需向けのサービスを充実させて生産性を高める必用があるだろう」と語っているという。

【赤字転落も近い? 専門家の分析】
 ロイターは、日本経済について、消費増税前の1月から3月に最も伸びる、との調査結果を打ち出していたという。しかし結局は、低迷する輸出が結局経済成長を妨げたとの見解を示している。このまま輸出が低迷し続けるなら、日銀は国債買増しなど新たな刺激策を迫られるだろう、と一部専門家は分析しているという。

 ブルームバーグによると、大和総研の齋藤勉氏は「政府が問題解決に明確な指標を打ち出せなければ、日本は構造的な経常赤字に陥るだろう」と指摘する。HSBCホールディングスのデバリエ・いづみ氏は、日本は2016年にも赤字に転落すると予測しているという。

 黒字額の減少傾向について、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は「かつては常に10兆円以上の黒字を出していた国なのに」と案じている。同紙は日本の今後について「今のところ日本の財政苦境は日銀が面倒を見ているが、円安に乗ってインフレが進むならば、それもどこまで継続できるか怪しい」と見ているようだ。

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Text by NewSphere 編集部