安倍首相、アベノミクス成功を世界にアピール それでもOECDは成長予測を下方修正

 経済協力開発機構(OECD)は6日、今年の世界経済の成長予測を3.4%とし、11月の3.6%の前回予想から下方修正した。来年については3.9%で変わらなかった。OECD34加盟国に限ると、今年は2.2%、来年は2.8%であるという。

 ユーロ圏などは逆に上方修正されてもいる。ただ、アンヘル・グリア事務総長は、世界金融危機の悪影響が残っていることを指摘し、「いまだ森を出てはいません」と評した。

【英米など堅調】
 金融危機以来伸び悩んでいたユーロ圏は、11月の1.0%から上方修正されて、今年1.2%の成長予想となった。来年は1.7%と期待されている。特にイギリスは、家計支出と企業投資の持ち直しにより、今年3.2%と好調な予報だ。なお、EU自身は今年1.6%、来年2.0%と強気な予想をしている。

 アメリカも、年初の寒波が影響して11月の2.9%の予想からダウンしたが、今年2.6%、来年3.5%と高い。日本は消費税増税により、今年1.5%から1.2%に下方修正された。再度増税が予定されている来年も、同じ1.2%とされている。

【新興国は心配だが、FRB量的緩和はやめるべき?】
 OECDが不安視しているのは、これまで世界経済成長のエンジンとされた新興国だ。中国経済は建設ブームの冷却と融資条件の引き締めにより、11月予想の8.2%および2013年実績の7.7%に対して今年7.4%、来年はさらに7.3%に減速するという。ウクライナ問題で信用不安のあるロシアも、わずか0.5%とされている。

 CNBCは、グリア事務総長が「厳しい金融・信用条件が新興国を圧迫することを強調した」と報じている。実際、米FRBの緩和縮小方針の余波で、インドなどが通貨安に苦しんできた。それにもかかわらずOECDは、米経済の好調により、FRBに年内の緩和終了を勧告した。

 またOECDは、上方修正とはいえインフレ率が目標を下回っている欧州について、欧州中央銀行に即時の、マイナス預金金利をも含む強力な行動を促している。CNBCによると、グリア事務総長は、「みな自ら鏡を見て、本当に自分に必要なことを行ってきたかどうか問う潮時だと思います」などと、欧州政治の怠慢を戒めているようだ。

【強気に勝利宣言の安倍首相】
 OECDは、日本については、現在の緩和策の継続と財政再建の断行、両方を注文している。国際通貨基金(IMF)は先月、アベノミクスが勢いを失いつつあると懸念を示したが、安倍首相は6日、パリのOECD理事会での基調講演で、アベノミクスの成功を主張した。

 安倍首相は、有効求人倍率や景況感調査結果の改善、企業の賃上げなどを理由に、日本経済はアベノミクスで一変したと主張。経済活性化、政府財政再建、社会保障改革の3目標を達成できる自信があり、「日本はいよいよデフレ脱却のきわにあると言って良い」「日本経済は戻ってきました」などと述べた(AFP)。

 AFPは、安倍首相はEUとのEPA(経済連携協定)早期締結を狙っているが「関税や貿易障壁の厄介な問題で思わぬ障害にぶつかった」とも指摘している。OECDも日本の貿易障壁の高さに不満を表明している。

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Text by NewSphere 編集部