TPP、日本の譲歩は必須か? オバマ大統領「尖閣防衛」発言で日本に“貸し”と海外紙報道

 日本を公式訪問していたアメリカのオバマ大統領は25日朝、3日間の日程を終えて、次の訪問地韓国へと旅立った。日米両国は同日午前、共同声明を発表。懸案の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉については、「重要な課題について前進する道筋を特定した」と評価する一方、「まだなされるべき作業が残されている」とした。

 海外メディアも、「オバマ大統領の訪問中という締切には間に合わなかったものの、ある程度の前進はあったようだ」などと微妙な評価を下している。

【「基本的な合意に至らず」と、甘利担当相は憔悴】
 日本の甘利明TPP担当相は、米側のフロマン通商代表との話し合いを終えて一夜明けた同日午前、憔悴した表情で「今回は基本的な合意に達することはできなかった」と、記者団に語った。同時に、「全体的には、溝はだんだんと縮まっている」とも述べた。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)、ロイターなど複数の海外メディアが報じた。

 TPPにより、アメリカは日本市場への自動車と農産物の輸出拡大を目論む。日本は、牛肉、豚肉、米などの重要品目については、“聖域化”を生産者団体等に約束している。フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、両国の思惑とともに、「日本は譲歩の引き換えにアメリカへの自動車輸出で関税の撤廃を求めている」とも記すが、いずれも最終的な妥結には至っていないようだ。

 同紙は、TPP交渉の次回の重要局面は、5月中旬に参加全12ヶ国がベトナムで開く会合と、それに続く中国でのAPEC(アジア太平洋協力会議)の場を借りた会合だと見る。そして、「その前にアメリカと日本の間で合意がなければ、(交渉全体が)後退する」と論じている。

【TPPは日米両国にとって「win-win」とオバマ大統領】
 安倍首相は、24日のオバマ大統領との共同記者会見で、TPPはアジアにとって「戦略的に非常に重要だ」と述べ、交渉の早期妥結を目指すと宣言した。アメリカにとっても、「TPPはアジアでのプレゼンスを拡大するための政策の中核だ」とロイターは論じる。オバマ大統領は会見で、TPPは「今年、来年だけのためではない。この10年、次の10年のためのものだ」と語った(FT)。

 FTは、両国とも政治的な反対と影響力のある産業界のロビー活動に直面するなど、国内の利害調整に苦慮していると分析する。しかし、両首脳はそれを振り払ってでも「妥結する決意を固めている」と同紙は記す。オバマ大統領は、記者団に対し、「我々は、時には有権者を現在の快適な立ち位置から追いやらねばならないだろう。しかし、それが最終的には全ての人々により大きな利益をもたらす」と、TPPの妥結は最終的には日米両国の「win-win」に終わるという考えを示した。

【韓国紙「オバマ大統領が安倍首相に譲歩を持ちかけた」】
 一方、韓国の中央日報は、オバマ大統領が到着初日の銀座の高級寿司店での夕食会で、安部首相に対し、TPPについて「安倍内閣の支持率は60%、私は45%。政治的な基盤が強いから(安倍さんに)譲歩してほしい」などと持ちかけたと報じた。

 また、同紙は、オバマ大統領が安部首相との共同記者会見で、アメリカ大統領として初めて尖閣諸島が日米安全保障条約の適用対象だと明言したことも詳しく報じた。オバマ大統領は当初、中国の反発を予想して、“確約”を求める日本側の要望に難色を示していたとする日本メディアの見方を紹介。にも関わらず、今回「日本に贈り物をした」のは、「TPPで譲歩を引き出すためだという解釈もある」と論じている。

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Text by NewSphere 編集部