消費増税の悪影響、“前回よりまし”と海外報道 その理由とは

 28日、総務省は物価変動を除いた2月の実質消費支出が、前年比2.5%減(6ヶ月ぶりの減少)となったと発表した。消費税増税前の駆け込み需要で、小売売上高は3.6%増となっているにもかかわらずである。大雪による一時的なもの、あるいは1月が好調だった反動とも言われるが、各紙は驚きの結果と報じている。

 そしてインフレ誘導には成功しているものの賃金増が追い付いていない状態で、いよいよ消費税増税が発効する。ブルームバーグは「日本はどうあっても物価を上げようとしていて、家計はそのキャンペーンの犠牲になりそうです」との専門家の評を伝えた。

【前回の二の舞は避けられるのか】
 ブルームバーグは、日本の巨大債務削減を助けると期待される増税(ただしGDPの240%とされる債務に対し、増税による増収は1%程度)ではあるものの、過去消費税を導入または増税した政権は竹下・村山・橋本いずれも、長くは保たなかったと警告する。

 1997年の前回増税後、5年にわたり、平均経済成長はゼロ以下であった。しかし同紙は、今の日本企業は当時よりずっと健全なので、「メルトダウンの懸念は、おそらく行き過ぎ」だと結論する。エコノミストらの予想によると、GDP成長は第1四半期が年率4.4%、増税後の第2四半期はマイナス3.5%だが、第3四半期にはプラス2%に戻るという。イオンなどは、需要が1ヶ月で持ち直すと予想している。

【すでに生産調整を始めている企業】
 増税後の需要減を見越した企業の生産調整は、すでに始まっている。総務省発表によると企業は、4月の生産減を月0.6%と予測しているという。しかしブルームバーグは、2月の工業生産が1月に比べて2.3%減だったと指摘する。エコノミスト予想では0.3%増であった。また、トヨタ自動車は今年の国内生産を5%削減する計画であり、日本自動車工業会によると、日本の自動車販売台数は4月以降16%減と予測されている。自動車、家電、住宅などの高額商品は、駆け込み需要と増税後反動の差が特に大きいと見られる分野だ。

 またウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「生産は1997年には下がりっ放しではなく、すぐに反発した。エコノミストらは、当時と現在の大きな違いの1つは、輸出の状態であると言う」と論じている。今回は1997年当時より輸出が弱く、また、日本企業の海外生産移転が拡大している点も不安材料だという。

【デフレマーケティングからインフレマーケティングへ】
 フィナンシャル・タイムズ紙は、代替ビールを初めとする従来の値下げ路線から転じて、高級路線の新商品が4月前後に続々と登場すると報じた。インフレと増税のダブルパンチにより、「心理的に金融ショックに等しい」事態となって、企業は認めたがらないが「値上がりから目をそらすために自社製品をドレスアップしている」のだという。博報堂の担当者は、企業がデフレ時代のマーケティングからインフレ時代のマーケティングへ移行しつつあると表現している。

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Text by NewSphere 編集部