消費増税で、66%が財布引き締めヘ アベノミクス最大の試練と海外は憂慮

 消費税増税を明日に控え、経済の先行きが注目されている。各紙、今回の増税はアベノミクス最大の試練であり、失敗すればアベノミクスの運命も、来年10月の10%への増税2段階目も、危うくなると評している。

【前回より強烈な駆け込み需要】
 フィナンシャル・タイムズ紙は、8%や10%に上がってもまだまだ先進国中最低レベルの消費税ではあるが、1997年の前回増税後、消費が急落して不況に突入したことは忘れられていないと解説する。

 同紙は、「歯磨き粉を買いだめするよう客に勧めるスーパーからタバコをカートンで宣伝するコンビニまで」、週末は駆け込み需要商戦のピークを迎えたと報じ、「4月1日の引き上げ後、店はどのぐらいガラガラになるのか?」「今のところ企業は、引きこもって増税前の駆け込みで得た利益でも数えているしかない」と憂慮する。

 2月の小売売上高は、「2度の破壊的な週末の吹雪にもかかわらず」前年同月比3.6%増となった。また電通の調査では、日本人の約60%が駆け込み購入の意思を示していたという。前回増税時は40%であり、増税後の不振はより大きくなる恐れがある。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙も、共同通信の世論調査では回答者の66%が増税後、支出を削減するつもりでいると報じた。80%近くが、経済見通しについて心配を表明したという。同紙の取材した家庭は、スマートフォンやルンバ掃除機を駆け込み購入したが、増税後は毎年恒例の「冬」休みの旅行も見送るつもりであるようだ。エコノミストらによると、駆け込み需要により第1四半期の経済成長率は4%を超えるが、第2四半期は逆にマイナス4%になりそうだという。

【緩衝政策への期待】
 各紙は、日銀への追加緩和期待が強まっていると報じている。市場は、早ければ7月にも追加緩和があるとの予測が多く、また、そうしなければ来年半ばまでに2%のインフレ目標には届かないだろうという。政府は増税の影響緩和のため、5.5兆円の公的支出を計画している。また麻生財相は28日、年間裁量予算約12兆円のの60%を年央までに執行してしまう考えを示している。しかし増税に至った財政事情から、限界はあるとの懸念もある。

 好材料を指摘する意見もある。ウォール紙は失業率の低さや、今年の春闘で久しぶりに大手企業がベースアップに踏み切ったことを挙げている。しかしフィナンシャル紙のほうは、「賃金はインフレ、ましてや消費税3%上昇の影響という、新しい環境に適応するに足るほど増えていない。大手自動車メーカーは1%足らずの賃金増でお茶を濁した」と評している。

 あるいは、政府の緩衝支出なら前回も行われていたはずだと指摘する専門家もいる一方、前回はアジア金融危機や銀行の不良債権問題が大きかったのであって、7月には消費は回復し始めていたとの反論もある。

 また、フィナンシャル紙の別記事では、「自動車労働者がそうでなくとも公務員は充分な昇給を得ており、法人税が減少している」、日本企業の株価はまだ株価収益比の面で割安である(まだ買われる余地がある)との指摘もある。

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Text by NewSphere 編集部