路線継続か? 次期FRB議長候補、イエレン氏の方針とは

 米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長が来年1月末に2期8年の任期満了を迎える。

 後任の最有力候補とされていたサマーズ元財務長官が15日、選考からの辞退を申し入れたことで、イエレン副議長が最有力候補に浮上した。

 カーニー大統領報道官は16日、候補指名の予定に変更はないと述べ、秋に発表する見通しに変わりはないと説明した。

 オバマ大統領は7月に、次期議長候補としてサマーズ氏とイエレン氏、ドナルド・コーン前FRB副議長の3人を検討していると表明していた。その他、候補になる可能性のあるとされていたガイトナー前米財務長官は16日、FRB議長職に関心がないと語った。

 オバマ大統領は次期FRB議長について決定を下しておらず、他の候補者が浮上する可能性もあるという。

【サマーズ氏辞退の背景】
 元主任経済顧問のサマーズ氏は米政府に人脈があり、米国有数のエコノミストとして、バーナンキ議長後任の最有力候補とされていた。

 今回の辞退はリベラル派の民主党上院議員による指名阻止キャンペーンが背景となっている。一部の民主党上院議員は、金融緩和を支持し過ぎ、ウォール街に近過ぎるとして、サマーズ氏の指名反対を呼びかけていた。債務上限問題やシリア攻撃に関する投票などで議会を相手に難しいかじ取りをしているオバマ大統領に対する配慮もある。

 民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員もサマーズ氏指名に反対した1人で、ニュース専門局MSNBCに「ジャネット・イエレンはすばらしいFRB議長となると思う」と語ったと、ニューヨーク・タイムズ紙は報じた。

【イエレン氏の経歴】
 イエレン氏は控え目で慎重な考えを持つことで知られており、上院民主党議員と多くの仲間の経済学者の間で広く支持されている。元同僚は「IQの高い、小さな女性」と語る。同氏が後任となれば、FRB初の女性議長となる。

 イエレン氏はカリフォルニア大学バークレー校の元教授の経歴を持ち、1994年にFRB理事、1997年に経済諮問評議会委員長、2004年にサンフランシスコ地区連銀総裁を歴任。2010年からFRB副議長を務めている。失業率低下のために果たした彼女の役割が、リベラル派の民主党議員の間で注目されている。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、同氏が任命されれば、FRBの債券購入プログラムや、ゼロ近辺の短期金利が継続する兆候だと指摘。ニューヨーク・タイムズ紙は同氏の功績で最も重要なこととして、FRBと公共とのコミュニケーション政策を挙げた。

【第3の候補者、コーン氏】
 コーン氏は、金融危機を招いたとされる、グリーンスパン前議長の顧問だった人物である。

 ワシントン・ポスト紙は、サマーズ氏辞退でイエレン氏とコーン氏の対決となった場合、両氏は経験、基本方針の見通しにおいてはほぼ同等であり、大統領は金融政策の観点の違いよりも、スタイルや気質のわずかな差を比べるだろうと指摘した。その上で、もしFRB議長初の女性で、ウォール街のエコノミストや米議会の多数が認めるイエレン氏よりもコーン氏を選べば、なぜという厳しい質問に直面するだろうとの見解を示した。

Text by NewSphere 編集部