構造改革遅れのツケ? 再び新興国が世界経済の足かせに

 経済協力開発機構(OECD)は3日、2008年の金融危機以降、世界経済の成長鈍化の原因が先進諸国から新興国に移りつつあるとの見方を示した。

【投資引き揚げで日干しになる新興国】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「近年G20が取り組む経済的な脅威のほとんどは、2008年の金融危機をきっかけとした、先進国から途上国へ資本の大きな流れから生じている」と総括している。

 各紙は、日米や欧州の経済が持ち直したことで米連邦準備制度の量的緩和策が縮小されるとの観測に伴って投資家がこうした資金を引き揚げていると報じている。これに依存してきた新興国は軒並み、資金調達コストの上昇や急激な通貨下落に苦しんでいる。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、OECDは新興国がこれまで構造改革をおろそかにしてきたことを批判し、それが「新興国の成長能力を年間1%ポイント損なっている」と評した。

 またOECDは、米連邦準備制度には貨幣発行や債券購入ベースの後退を推奨し、他の先進国中央銀行には「失業を減らし余剰能力を排除するため、アクセルペダルを踏み続けるよう申し渡した」と報じられている。新興国については、成長率鈍化にも関わらず、資本流出防止のため金利を上げる以外選択肢は少ないだろうと述べているという。

【喉元過ぎれば熱さ忘れる先進国】
 今週末にはロシアのサンクトペテルブルグでG20サミットが開催される。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、新興国は米連邦準備制度の量的緩和策縮小において、市場の動揺を最小限に抑える配慮を望んでいるが、米国はそれには関心が薄い様子だ。また、財政再建を呼び掛ける欧州に対し、米国は世界的な需要喚起を重視している。さらに同紙は、そもそも各国の関心はシリアにあると指摘している。

 これに対しブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの「BRICS」諸国は3月に合意されていた、1000億ドルの「緊急準備金協定」を設立する取り組みを、独自に進めると見られている。懸念されていた出資比率は中国410億ドル、ブラジル、ロシア、インドそれぞれ180億ドル、南アフリカ50億ドルと報じられている。

【各国についての成長予測と今後の使命】
 またニューヨーク・タイムズ紙は、OECDによる各国成長予測を伝えた。それによると第2四半期、年率2.5%の成長であった米国は、第3四半期に2.7%、第4四半期に2.5%と予測される。第2四半期に2.6%だった日本は第3四半期2.6%、第4四半期2.4%。ドイツ、フランス、イタリアのユーロ圏3大経済は、全体で第2四半期に1.6%であったが、第3四半期1.3%、第4四半期1.4%と鈍化する。第2四半期7.0%の中国は「谷を過ぎ」、第3四半期7.2%、第4四半期8.1%と持ち直すという。

 OECDは「成長を後押しする改革、世界経済のリバランス、雇用創出への構造的障害を軽減することが、なおも使命であり続ける」と述べている。

Text by NewSphere 編集部