また抵抗勢力に負けるのか? 海外紙が案じるアベノミクスの行方

 アベノミクス「第3の矢」である成長戦略は、14日に閣議決定される予定だ。しかし、市場の期待にかなうほどの内容ではないとして、急騰していた株価は下落している。
 海外各紙は、安倍政権の構造改革の行く末を不安視している。

【起業に冷淡な日本】
 フィナンシャル・タイムズ紙は、日本における起業の困難さを描写した。
 パチンコ店前でのコーヒー販売から出発し、現在は保育所などを展開するJPホールディングスは、厚労省や警察から販売許可を得るため、粘り強い折衝を必要とした。
 ソーシャルメディアにおける消費者トレンドを追跡するホットリンクの創業者は、3億円の融資を得るために3億円の担保を提供しなければならなかった。また100万ドルの融資を日本ではなく、カリフォルニア州でようやく得ることができた。
 同紙は、日本の2011年度のベンチャー企業への投融資額が米国の19分の1しかなく、しかも銀行はベンチャー企業の価値を低く見積もっていると指摘する。竹中平蔵・元経済財政担当相は、「新参企業が少なすぎ、ビジネスに留まっている不採算企業が多すぎます」「我々は、日本の代謝を増やす必要があります」と語った。

【抵抗勢力に骨抜きにされる、というデジャブ】
 ニューヨーク・タイムズ紙は、安倍政権が掲げる構造改革の内容が、過去の歴代政権からの流用であり、今回に限って成功するとは言いがたいと指摘した。また、1960年代に池田勇人内閣の所得倍増計画が成功して以降、日本経済は成熟し、その成長は鈍化を免れていないと解説した。
 安倍首相が手本にした小泉改革にしても、例えば郵便局の郵便事業自由化は、「全国に少なくとも10万のポストを設置し、それらのすべてから少なくとも週6日収集する」という厳しい参入条件のため事実上無意味であり、「路傍に打ち捨てられている」と評した。
 今回安倍内閣が打ち出した「薬のインターネット販売自由化」についても、薬剤師団体からの反発を受けて、当の自民党内から反対が出ており、来月の参院選を前にして既に規制維持に傾いていると伝えた。

【アベノミクスの行方で、アイドルのスカート丈が変わる?】
 ガーディアン紙は、輸出業者や金融関係が潤っても、労働者に恩恵が届いていないと指摘した。2000年代半ば、最後に企業業績が上昇した時は、低賃金労働者の増加など格差拡大に終わっており、この格差が減らせなければアベノミクスは成功しないとの専門家の意見を伝えた。
 また、「たぶん、定年間近の人達は大して経済を心配していないのでしょうが・・・」「もらえたとしても私の両親と同じぐらいの年金はムリだろう、という事実は、もう諦めがついていますよ」という、デフレしか経験していないサラリーマンの冷めた意見も紹介している。

 同紙は、経済用語を歌の題材に用い、株価が上がればスカート丈を縮めるというアイドルグループ「街角景気☆JAPAN↑」に皮肉交じりに言及した。記事は、「ここ数週間の日経平均株価の劇的な変動は、街角景気のスソ線に狼藉を働いてきた」「時間だけが、記事の結末がどういう形になるかを教えてくれる。ブーム時代のミニスカートか、それともデフレの膝丈ルックなのか。」と結んでいる。

Text by NewSphere 編集部