アベノミクス「第3の矢」に失望? 海外紙が分析する理由とは

 安倍首相は5日、アベノミクスの「第3の矢」である経済改革戦略を発表した。
 首相はこの戦略で、外国直接投資増を狙っての税制優遇措置、薬のインターネット販売解禁、規制緩和と投資のための実験的経済特区、年金運用先の国債から株式等へのハイリスクハイリターン化、エネルギー市場の自由化、仕事と家庭の両立支援、などを示した。
 首相は10年で1人当たりGDPを40%、すなわち150万円増やす目標を掲げ、「今こそ日本が世界経済の成長のエンジンになる時であります」「アベノミクスのエンジンは民間の力です」と語った。
 だが、株価は演説の最中から下落し始めた。日経平均株価はこの日、3.8%下げで終えた。

【改革の核心はどこへ行ったのか】
 ニューヨーク・タイムズ紙はこの戦略が、時代遅れの大企業を退場させビジネス界の新陳代謝を図るという、改革の核心が抜け落ちていると指摘した。
 同紙は、1996年以降に設立された日本企業が、2010年までの期間における雇用創出のほとんどを担っているという研究結果を引用した。
 また、女性の労働参入促進策が実際には逆効果と考える意見や、正規雇用と非正規雇用の違いを考慮していない点、民間投資との競合により政府の資金調達コストが上昇する危険などを指摘する意見も紹介した。

【市場の期待に添わない視点】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙も、余剰人員の解雇を断行させないことや、企業の外部取締役任命義務の抜け道など、「不況の根本原因を解決するために必要な厳しい決断のいくつかから逃げている」との評価を示した。
 同紙は、「人々が今、株式市場がたった半年でこれだけのことを達成できたんだと見てなおさら、はるかに短期的な焦点を当てているというのに、彼は長期的タイムスパンの事ばかり話していました」「演説の中には無意味な数字の羅列がありました。どうやって達成するつもりか判りません」などとの声を伝えている。

【今度に限って成功するのか】
 同紙は「政府の戦略は今のところ機能してきました」と、アベノミクスの実績を評価する声も紹介するが、発表された戦略はまだ法案として草案化されておらず具体性に欠け、まだ起こりそうな影響の判断は難しいと述べている。
 また甘利経済産業相は、過去の政権の失敗との違いは、計画についての「迅速な行動、年次レビュー、定期的な改訂」の有無にあり、そのために万全の体制を整えたと語っている。7月の参院選では自民党の勝利が見込まれており、近年の短命政権よりも長続きしそうな点は確かに異なるといえる。

Text by NewSphere 編集部