長期金利上昇で銀行が危ない? 黒田総裁の対策とは

 先週、10年国債利回りが、1年以上ぶりに1%に上昇した。国債利回りの上昇は、既に保有する債券の価値下落を意味するため、国債を大量保有する金融機関にとっては含み損リスクとなる。
 海外各紙は、これに対する黒田日銀総裁の見解を詳しく報じている。

【黒田総裁の強気発言とリスク認識】
 これについて26日、黒田東彦日銀総裁は金融学会の講演にて、長期金利が1-3%ポイント上昇しても、経済・物価情勢の改善を伴う限り、「金融システムが不安定化する懸念は大きくない」と語った。
 黒田総裁は、現在の銀行が過度の不良債権を抱えてはおらず、融資の拡大や、利ざやの改善によって対応可能と指摘する。
 なお日銀は、利率が1%ポイント上昇すれば、大手銀行で10%、弱い地方銀行で20%の損失に相当すると推計している。

 ただし黒田総裁は、銀行の対応能力は「利上げの程度と速度に依存」し、実経済の改善が伴わない場合には、「評価損から強い負の影響を受ける」と警告した。
 円安や株価上昇が、企業投資や雇用の改善にまでは至っていない中、総裁は、中小企業向けの融資が伸びていないことを認めている。
 また政府債務の増加が財政への危惧を呼ぶことから、政府の財政改革と成長戦略の実行が「何より重要」と総裁は述べた。
 さらに総裁は、家計に対し、貯蓄の一部を、銀行預金から株式などの高リスク資産に移動することを奨励した。

【総裁発言の意図】
 また総裁は、「資産市場あるいは金融機関の活動において、過度に強気の期待は、目下その兆候がございません」などと語った。ブルームバーグが「経済に前向きな動きの兆候がある時に懸念を示して冷水を浴びせかける道は、彼にはありません」との専門家の見方を伝えるなど、各紙は、総裁の発言が市場の安心を意図したものと見ている。
 日銀は新規発行国債の70%にあたる大量購入を表明しており、本来ならば国債金利は下がるはずである。しかし実際には金利は上昇しており、フィナンシャル・タイムズ紙は、日銀が多くの投資家を混乱させていることを示唆した。
 総裁は先週、刺激量は十分であり、市場の不安定性を制限する必要があれば債券購入操作を調整しうると発言していた。

Text by NewSphere 編集部