海外紙の「アベノミクス」評価

 内閣府が発表した2013年1-3月期の国民総生産(GDP)速報値によると、実質GDPは前期比0.9%増の3.5%で、エコノミスト予測2.8%を大きく上回る高成長となった。2四半期連続のプラス成長の大きな要因としては、特に個人消費において、「アベノミクス」に対する期待感が高まったことが挙げられている。
 また、4年ぶりに対ドルが100円を突破。20年間不景気が続いていた日本経済に大きな動きが見られている。
 海外各紙は、日本経済を代表する自動車業界に円安が与える影響に焦点を当てつつ、戸惑いを隠し切れない国内の声を取り上げている。

【自動車業界は歓迎】
 自動車業界では円安によって海外での販売が拡大することが期待されており、トヨタやホンダ、日産など7社が合計で1兆円以上の利益増加を見込んでいるようだ。

 特に国内生産維持を進めてきた日産では円安を歓迎。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、1ドル75~80円だったこの2年間は、栃木にある主要工場で生産する海外向け製品は基本的に赤字だったという。栃木で生産する海外向け高級ブランド「インフィニティ」は人気があるにも関わらず、為替の影響で会社全体の利益にもたらす率は1%程度だったという。
 しかし、今後の円安で状況は改善し、インフィニティによる収益は拡大していくだろうとゴーン社長は期待しているようだ。為替に関しては、経済危機以前の110~112円が妥当だと述べているという。

 一方、海外への生産拠点に投資を進めてきたスズキの鈴木社長は、円安による恩恵は他社ほどでないとしている。むしろ、急激な円安傾向に不安を感じていると発言した点にフィナンシャル・タイムズ紙は注目している。同氏は、「長期的には地産地消の方針は間違えていない」と述べ、これまでの海外生産の方針を変更するつもりはないようだ。

 また、2014年3月期決算で連結営業利益36%増を発表したトヨタ自動車も、生産方針の変更や賃金アップなどについてはコメントを控えているという。

【エコノミストは経済成長を予測するが・・・】
 アベノミクスの効果が、物価上昇だけで、賃金アップなど国民へプラスの結果をもたらさないのであれば、成功とはいえないとフィナンシャル・タイムズ紙は指摘している。
 また、ウォール・ストリート・ジャーナル紙も、円安によって食料品や燃料などの生活必需品の輸入価格が上昇することで、家計を圧迫しかねないと指摘。賃金に関しても、政府から企業へ賃上げを要請しているものの、3月時点では前年同月比0.6%減だったという。

 日本経済研究センターがエコノミスト40名を対象に行った調査によると、14年3月までのGDP成長率予測は平均でプラス2.4%で、半年前のプラス1.4%を上回っているとウォール・ストリート・ジャーナル紙は取り上げている。
 効果が見え始めたばかりのアベノミクスだが、この勢いが持続するかどうかは安倍政権による成長戦略「第3の矢」の成果によるだろうと同紙は報じている。「第3の矢」は規制緩和や抜本的改革案などを組み合わせた政策として、6月までに取りまとめられる予定だ。

Text by NewSphere 編集部