黒田日銀総裁就任 海外紙が指摘するインフレ目標への障害は?

黒田日銀総裁就任 海外紙が指摘するインフレ目標への障害は? 21日、日銀の黒田東彦総裁および岩田規久男・中曽宏副総裁は就任会見を行った。2年間で2%のインフレ目標達成と、「そのために必要なことは何でもする」姿勢を改めて強調した。黒田総裁は「量と質の両面で大胆な金融緩和を行う必要があることに疑いの余地はありません」と述べ、岩田副総裁は2年間で2%に届かなかった場合の辞任を示唆した。中曽副総裁も、過去の日銀には政策面でさらなる余地があったかもしれないと表明した。
 海外紙は就任会見の模様を報じている。

 安倍政権は大胆な金融緩和を謳って昨年の総選挙に勝利したが、白川前総裁も含め、過剰な緩和が80年代のバブルの原因であったとして警戒する声も多い。
 しかし黒田氏は、現在バブルが発生する兆候はないと否定した。ウォール・ストリート・ジャーナル紙はまた、「インフレ喚起のために市場の期待をコントロールしようとか、デフレ克服のために円安に依存しようとするのは危険」という白川氏の主張を、黒田氏が否定したと伝えた。黒田氏は、日本の輸出産業のための意図的な円安誘導を否定しつつ、「我々は、期待や予測の効果を無視することはできません。金利がゼロで立ち往生している状況にあっては、期待の効果は大きいです」と発言した。

 だがこの日、黒田氏らは特に目新しい発表をしなかった。市場は日銀に、本来来年から予定されている資産購入プログラムの前倒し実施などを期待しており、4月3日からの最初の定例政策委員会前を待たずに臨時会合を開くとの期待もあった。しかし黒田氏らがそれらについて明言を避けたため、為替市場の値動きは小さかった。

 また各紙は、「このデフレは構造的なもの」「人口の高齢化、世界最大の政府債務の負担、労働市場の柔軟性の制約」といった理由を挙げて、2年間で2%という目標には実際届くまいと考える見方も多く伝えている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、麻生財務相が、2年で達成できるとした岩田氏に対し、「学者の典型です。彼らは実経済を理解しておられない」と批判したことを報じた。

 またブルームバーグは2月の輸出減少、円安による輸入コスト上昇、原発閉鎖のための化石燃料依存増により、この日「30年で最長の貿易赤字」が報告されたことを伝えた。同紙は、金忠洙・韓国中央銀行総裁の、低金利状態が長く続き過ぎている事への懸念も取り上げている。

Text by NewSphere 編集部