日銀が踏み出した「金融緩和策」は是か、非か?

日銀が踏み出した「金融緩和策」は是か、非か? 
 22日、日銀は金融政策決定会合において「景気テコ入れのための果敢な措置」に出ることを決定。2%の物価上昇率目標と無期限の金融緩和策を発表した。
 昨年中から、景気低迷局面での日銀の無策を非難し、首相就任後は法改正までちらつかせて大胆な金融緩和策を要求してきた安倍氏にとって、22日の政府と日銀の共同声明は「画期的」な勝利でもあった。これに対し、一部の国からの警戒感が強まっているものの、日本は正面から反論。
 海外各紙は、こうした議論、政府筋のさらなる緩和への要望、景気回復への期待などを多面的に取り上げた。

【独英中の批判、日本の反論】
 ドイツ、英国、中国が、中央銀行の独立性が脅かされること、平価切り下げ競争勃発による世界経済への悪影響を懸念した、とフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。
同紙によれば、なかでもドイツ連銀のワイドマン総裁は、「日本」を名指しにしつつ「政府が中央銀行主導であるべき金融政策に積極的に介入している。これまでのところ、世界の金融システムは平価切り下げ競争という事態を経験せずに危機を乗り越えてきたが、いよいよその危機が顕在化してきている」と危機感をにじませているという。同氏は、1980年から1990年代の「大安定」時代を後にし、金融危機やエネルギー需要の高まりなどの不安要素によって中央銀行に「荷が重すぎる」役割が求められていることに警鐘を鳴らし、「中央銀行の任務」は「拡大解釈すべきではない」との主張を堅持しているという。
 これらの批判に対し、経済財政担当相の甘利氏は、今回の金融緩和策の第一の目的は「国際競争力の強化」ではなく、国内経済の活性化と物価の上昇にあると反論。「日本は他国の消費だけに頼るわけにはいかない。自国の経済の基礎を強化する必要がある」と正統性を主張し、円安が実現したとしても、それは日本政府の誘導によるものではなく、「強すぎる円」が自然に解消されていくプロセスだ」と述べた。

【むしろ不十分、との浜田教授の指摘】
 しかし、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道によれば、内閣官房参与の浜田氏は、今回の日銀の金融緩和策を「一歩前進」としつつ、「雇用についての言及がなく、インフレ目標達成の時間枠を設けていない点において「不十分」」と評価。中央銀行の独立を保障する現行の法律は、必要な措置の断行を義務付ける形に改正するべきだとの踏み込んだ認識を表明した。

【景気判断は上方修正】
 さまざまな波紋が広がる今回の日銀の発表だが、市場は、質的量的実効性の乏しさを冷静に見通しているとされる。しかし安倍内閣は、一連の景気対策の効果を自負している模様だ。1月の月例経済報告を関係閣僚会議に提出した甘利氏は、自動車販売が「底を打った」とし、個人消費を「底堅い動きとなっている」と発言。生産についても「下げ止まりの兆しがみられる」と述べ、景気の基調判断は「弱い動きとなっているが、一部に下げ止まりの兆しもみられる」と、昨年5月以来8カ月ぶりに上方修正したという。

Text by NewSphere 編集部