日銀緩和・2%物価目標 海外紙はどう報じたか?

日銀緩和・2%物価目標 海外紙はどう報じたか? 日銀は21、22日の金融政策決定会合で、2%の物価上昇率目標と、その達成に向けて期限を定めず市場から資産を買い入れる緩和策の導入を決定した。政府と一体となってデフレ脱却に取り組む共同文書も発表した。安倍首相は、経済財政諮問会議で、今後3ヶ月ごとに日銀の金融政策の検証を行う考えを示した。
 安倍首相は、かねてより「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間の投資を喚起する成長戦略」という「3本の矢」で、デフレと円高を打破するという目標を掲げてきた。今回の決定についても、「2%の物価目標という責任を明文化し、金融政策を大胆に見直す意味でも、画期的な文書。マクロ経済政策のレジームチェンジ(体制転換)の実現がはっきりした」と高く評価した。
 日銀の「英断」はメッキか、本物か。その効果のほどは?海外各紙は、諸外国政府筋や専門家、金融機関のそれぞれの評価を分析した。

【通貨切り下げ競争、という批判】
 今回の「声明」について、フィナンシャル・タイムズ紙は、各国の政府筋の反応に注目した。ドイツのミヒャエル・マイスター議員は「非常に憂慮すべき」とし、自国通貨の切り下げ競争の勃発を避けるために「G20の同胞に働きかけ、日本の軌道修正を求める」と発言。イングランド銀行のキング総裁も同趣旨の発言をしたという。とはいえ同紙は、日銀の行為が、金融刺激と平価切り下げによって景気のテコ入れを図る、連邦準備制度(FRB)と欧州中央銀行(ECB)の施策を後追いしたものだとも述べている。

【欧米の先行事例】
 この点にさらに踏み込んだのはニューヨーク・タイムズ紙。同紙は、FRBのバーナンキ議長が、インフレ抑制を主要な任務とする中央銀行の役割を踏み越えてデフレ阻止に出た理由が、アメリカの大恐慌と日本の長い景気の低迷という経験にあったと分析。現在のQE3(量的緩和第3弾)でも、失業率低下という成果が出るまで緩和を継続するという強硬姿勢に出ていることを紹介した。また、ECBも去年、相当の圧力を経て、ユーロ圏の崩壊を防ぐためなら「手段を選ばない」と誓い、一層の積極策に動きはじめたという。

【冷ややかなアナリスト、市場の反応】
 一方、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は外国為替のアナリストたちの意見を紹介した。モルガン・スタンレーのチーフ・エコノミストは、今回の日銀の施策は「無限」とは名ばかりと指摘。その理由は、「終了時期は明示していないものの、量的には限られた幅であること」「新プログラムの下での資産買い取りが2014年まで開始すらされないこと」「実質的に、日銀はおおむね(債券買い取りの)現行ペース維持を約束しているに過ぎないこと」にあるとされた。
 安倍首相の就任前からの「鳴り物」に反応し、期待を織り込んでいた市場は、「期待はずれ」の発表に反発。円は上昇に転じ、最近2010年4月以来の高値をつけていた日経平均株価指数は、午後の共同声明発表のあと前日終値比0.4%安で終了したという。
白川総裁の任期切れが近く、次に総裁の座に座る人物がより画期的・抜本的な緩和策を打ち出すことへの期待感と、出鼻をくじかれた金融緩和策が日本経済を泥沼に引きずり込む不安感を併せ持ちつつ、市場が「日本の行く末」を注視していることが明らかになった。

Text by NewSphere 編集部