安倍氏と白川氏の攻防、景気回復と日銀独立の行方は?

安倍氏と白川氏の攻防、景気回復と日銀独立の行方は? 20日、日銀は金融政策決定会合で、資産買入基金による10兆円の追加緩和を決めた。白川総裁はさらに、来年1月の次の会合で、より具体的な物価「ターゲット(目標)」を検討すると公言。これらが、次期総理大臣の安倍晋三自民党総裁からの、強い要請に応えるものであることを認めた。
 金融政策の本丸たるべき中央銀行への政府の横やりはどこまで許されるのか。安倍次期総理が掲げる「民意」の旗印に道を譲った形の白川氏の思惑は? 緩和策を取れば、本当に、低迷を続ける日本経済は浮揚するのか?海外各紙は、それぞれの切り口で、諸問題を分析した。
 
 安倍氏の選挙中から続いた日銀に対する威圧的な姿勢に触れたのはニューヨーク・タイムズ紙。同紙は、日銀が目指してきた1%の物価上昇率を不十分とした安倍氏が、2~3%の物価上昇率の目標設定と、資産買入の増強による政府の刺激策への資金供給を求めてきたと報道。無期限の緩和が必要との立場から、日本銀行法の改正を進め、金融政策における政府の発言権を大きくすると警告していたとした。安倍氏は、20日の日銀の決定を「われわれが選挙戦で訴えてきたことが、ひとつひとつ実現している」と述べ、満足の意を示したという。
 これに対し、白川日銀総裁は、現状でも、日本は他の先進国に比して、国内総生産(GDP)に対する国債の発行残高の割合が著しく高いと説明。無軌道なインフレ追求は経済を破滅させるという立場だ。さらに、中央銀行が政府の政策資金を調達することになれば、中央銀行の独立は侵され、金融の規律が失われ、信用は失墜すると警告し、「経済浮揚には、日銀の政策改革よりも、規制緩和などの政治努力が必須」だと切り返しているという。

 安倍氏と白川総裁の攻防について、フィナンシャル・タイムズ紙は、人々に消費を「強制」することは困難とし、日銀が「不可能だと考えている」経済政策を無理強いさせられているのは、「中央銀行の独立の失墜」を意味するというエコノミストの悲観的見解を伝えた。ニューヨーク・タイムズ紙は、後に撤回したものの、安倍氏が日銀の会合前に、緩和決定を白川氏に伝えられたと発言したことで、「総裁が現職よりも次期総理を優先したことは、日銀の政府に対する完全降伏ではないか」と一時騒然となったことを報道。一方、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、一見従順な白川総裁が、首相の物価上昇「目標」設定の要求に対し「めど」というやわらかな言葉を使い続け、いつ、どのようにこれを実現するかについては余裕を持たせているなどをとりあげ、したたかな防戦の模様を示唆した。

Text by NewSphere 編集部