実在の黒人侍「弥助」奴隷から信長の家来に 数奇な人生、海外で映画化も
◆海外も興味
ここまでが弥助の京都での活躍のあらましだ。信長に初めて呼び立てられてから本能寺の変まではわずか15ヶ月という短さであり、さぞ目まぐるしい日々だったことだろう。遠い異国の地・日本で初めての外国人武士となった弥助を、世界のメディアが取り上げている。
英BBC(1月20日)は、「信長が弥助に士分を与えた当時、日本人ではない武士は存在しなかった」と述べ、弥助の待遇がいかに慣例破りのものであったかを強調している。信長が「弥助の巧みな話術に興味を引かれたのだろう」と見る意見も紹介しており、彼の知的なセンスに信長が心酔していたことをうかがわせる。当時の京都にはほかにも外国人はいたが、布教活動に熱心な宣教師たちが多かった。警護役として連れてこられただけの弥助は純粋な話し相手となり、そのため信長にいたく気に入られたのだろう。
彼の活躍は書籍化されており、その一つに『African Samurai: The True Story of a Legendary Black Warrior in Feudal Japan』がある。政治や宗教などさまざまな側面を絡めてドラマチックに綴るこの書籍は、米アマゾンで星4.4を獲得するなど好評だ。米CNN(2019年8月11日)は、著者であり日本史を研究しているロックリー・トーマス氏の解説として、「人々は彼の姿を一目見たい、そばに行きたいと躍起になった」と述べている。黒い木像で表現されることの多い大黒天になぞらえ、弥助と出会ったばかりの信長は、彼のことを神の化身だとすら考えていたという。意外性に満ちたストーリーの数々が、弥助人気を呼んでいるようだ。