結婚時に「再婚許可証」もらう妻も!? 意外な江戸時代の結婚・離婚事情

東京都立中央図書館特別文庫室所蔵、歌川豊国(3世)『卯の花月』(部分)

◆すべてはカネ次第? ドライな幕末の離婚スタイル
「去る時は九十両では済まぬなり」という離縁にまつわる有名なフレーズがある。当時は女性が持参金をもって結婚することが多く、夫はこれを離婚するときに全額、妻に返さなくてはならなかった。嫁入り道具も妻が持ち去るので、男性はすっからかんになり、大変だという意味である。

 持参金のほかに金銭を妻に提供したり、子供への形見分けという名目で土地や金銭を与えたりする例もあり、女性にとっては離婚後の生活保障となった。金さえあれば離婚できるという仕組みは、当時の女性にとって安心材料だったに違いない。

 江戸後期以降、農業技術の向上と産業の発達によって農村部でも貨幣経済が発達した。幕末、開港して生糸が輸出品のトップに躍り出ると、関東を中心に養蚕がさかんな地域では生糸の生産量が急増。渋沢栄一の生家のように、商家のようになる養蚕農家も増えた。農家では女性も主要な働き手であり、養蚕は古くから女性の労働だったため、現金収入を得た女性は家での発言権は増していく。大河ドラマ『青天を衝け』で、栄一の周りの女性たちがいきいきと暮らしているのも、そうした景気のよさが背景にあるのかもしれない。

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Text by 伊藤 春奈