ヘンリー王子夫妻はなぜ英国に戻るのか 王室復帰説と警護問題

豪ボンダイビーチを訪れたヘンリー王子とメーガン妃(4月17日)|Jonathan Brady / Pool Photo via AP

 2020年に王室の公務から退き、アメリカに移住していたヘンリー王子とメーガン妃が、イギリスへの帰国を計画していると欧米メディアが報じている。一家の帰国により、チャールズ国王も会う機会が増えることを歓迎していると伝えられているが、公務から退いてイギリスを離れた夫妻の帰国報道をめぐり、さまざまな憶測が飛び交っている。

◆狙いは王室復帰? 突然の帰国の理由は?
 報道によれば、一家は帰国後、ロンドン郊外の王室所有ではない私邸に移り住む予定で、7歳のアーチー王子と5歳のリリベット王女は、9月から学校に通い始めることになっているという。

 事情に詳しい情報筋によれば、チャールズ国王が夫妻の帰国計画を知らされたのは8月16日だった。バッキンガム宮殿は、夫妻の移住計画についてコメントしていない。

 米ABCの王室担当コメンテーター、ビクトリア・マーフィー氏は、アメリカで長年にわたり生活基盤を築いてきた夫妻のこの決定は、劇的な転換点を意味するとし、6年前に王室から離脱して以来、2人がこれまで主張してきたことからの完全な方向転換だと述べる。しかし、ヘンリー王子が、公務を担う王族としてではないものの、イギリスで果たすべき役割がまだ自分にはあると考えていること、子供たちにイギリスの教育を受けさせ、同国との絆を持たせたいと考えていることが、帰国の理由ではないかと述べた。

 なおABCによれば、今回の帰国はヘンリー王子夫妻が王室公務に復帰することを意味するものではなく、夫妻は今後も公務を担わない王族として生活するという。

 王室関連の著書がある作家のアンドリュー・ローニー氏は、ワシントン・ポスト紙(WP)への寄稿で、結局のところ、2人のアメリカでの試みはうまくいかなかったと指摘。ヘンリー王子は、独自の「代替王室」をイギリスで築くことをもくろんでおり、がんを患っている父親がまだ王位にあるうちに、そして兄ウィリアム皇太子が王位を継承する前に、王室内での足場を固めようとしているのではないかとした。6年前にエリザベス女王から、王室に「半分残り、半分離れる」戦略を拒否された夫妻が望んでいるのは、王室のガーデンパーティーで代役を務めるよう求められ、最終的には公務に復帰することのようだと述べている。

◆帰国のカギ握る警護問題 何らかの進展か
 ヘンリー王子一家の帰国計画が報じられたことを受け、イギリスによる警護のレベルをめぐる問題が浮上しているという。そもそも2人がアメリカに移住して以来、夫妻のイギリスにおける警護レベルは引き下げられており、アメリカでは自費で警護を手配してきた。ヘンリー王子は警護レベルの引き下げに不満を抱き、法的な異議申し立てをしていたが敗訴しており、警護が不十分なことを理由に、「家族をイギリスに連れてくるような世界は想像できない」と語っていた。(BBC

 BBCによれば、王室・VIP執行委員会(Ravec)は、夫妻の帰国に際し、改めて警護の取り決めを見直す必要に迫られているという。Ravecによる再評価の結果次第では、夫妻は以前から望んでいた水準の、納税者負担による警護が受けられるようになる可能性がある。

 ABCのマーフィー氏は、警護こそがカギだと説明。帰国計画が明らかになったことは、ヘンリー王子が家族を連れて帰れる程度には今後の警護体制に安心感を抱いている可能性を示しているとした。

◆王室は人材不足 不人気も時間が解決か?
 過去に王室やイギリスについて辛辣な批判を繰り広げてきたヘンリー王子夫妻の帰国報道について、ローニー氏は、イギリスの論評や一般市民の反応は圧倒的に否定的だと指摘している。最近の世論調査でも、夫妻に対する評価は全体として否定的で、特にウィリアム皇太子夫妻と比較した場合に、その傾向は顕著だという。

 しかし、ローニー氏は、かつては激しく非難されたカミラ王妃も現在では評価が大きく変わっていると指摘し、ヘンリー王子夫妻は王室内部や国民の態度がやがて変わることを願っているに違いないと述べている。また、イギリス王室は人材確保の危機に直面しており、新たな戦力を必要としているため、夫妻の王室と民間を行き来する「準王族」戦略が実現する可能性もあるとした。加えて、来年8月にはダイアナ妃の死から30年を迎えるため、国民の同情の波が夫妻を後押しするかもしれないとしている。

 米ニューヨーク・タイムズ紙は、ヘンリー王子が事実上の宣戦布告を行い、非難してきたタブロイド紙などのイギリスメディアとの関係も、帰国後の問題になるだろうとしている。王子はデイリー・メールによる盗聴などを訴えていたが、そのうち盗聴などに関する主張は最近、裁判所に退けられた。今後夫妻がメディアからどう扱われるかは未知数だとしている。

Text by 山川 真智子