『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』評 胸を打つピーターの孤独 2.5/4
『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』の一場面|Sony Pictures via AP
気のせいだろうか。それとも、『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』の冒頭で、トム・ホランド演じるピーター・パーカーは、以前よりもニューヨーカーらしい話し方になっているのだろうか。
その抑揚と、どことなくクイーンズ訛りを感じさせる話し方が印象的だ。ピーターはジーン・デウォルフ警部(ライザ・コロン=ザヤス)と電話で、街を悩ませる犯罪について話している。今ではスパイダーマンに専念しているため、すぐさま行動に移ることになるのだ。しかし、陽気なやりとりの裏には、物憂げな感情が潜んでいる。もちろん前作を観た者なら、スパイダーマンの孤独な時代が始まったことを知っている。
前作の終盤で、ピーターはスパイダーマン人生で最も悲しい一杯ともいえる、持ち帰りのコーヒーを買っていた。恋人のMJはドーナツ店のカウンターにいたが、ピーターが誰なのか全く分からない。世界を救うために彼が払った犠牲の一環として、MJのピーターに関する記憶は消されていたのだ。
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の結末で運命を決める呪文をかける前、ドクター・ストレンジはピーターに「君が初めから存在しなかったかのようになる」と告げた。それでもピーターの決意は固く、「やってくれ」と答えた。そして4年後の今、彼はその精神的な代償を払っている。
ピーターは殺風景なアパートで一人暮らしをしている。愛するメイおばさんは、もちろん前作で命を落とした。ピーターはSNSを通じて、MJ(ゼンデイヤ)と親友のネッド(ジェイコブ・バタロン)がマサチューセッツ工科大学(MIT)で充実した日々を送る様子を見守ってきた。かつては3人で一緒に暮らし、同じ学校で学ぶことが彼らの夢だった。だが、現実はそうならなかった。
『ブランド・ニュー・デイ』の序盤は、これまでとは毛色の違う作品であることを示している。マルチバースをこじ開け、大満足の再会を次々ともたらした『ノー・ウェイ・ホーム』のような、サプライズ満載のファン向けお祭り映画ではない。前作には、グリーン・ゴブリン、ドクター・オクトパス、エレクトロ、サンドマンといった往年の悪役たちが勢ぞろいした。しかし何より胸を躍らせたのは、トビー・マグワイアとアンドリュー・ガーフィールドという2人の歴代スパイダーマンの再登場だ。2人はホランドと、それぞれが経験した心の傷や、腰痛、ウェブの発射方法について語り合い、絆を深めた。
確かに、あれを超えるのは難しい。そして残念ながら、『ブランド・ニュー・デイ』は、上映時間が2時間に近づき、それを優に超えていく第3幕で、明らかに勢いを失う。
とはいえ、デスティン・ダニエル・クレットン監督の本作には、熱心なファンにとって別の種類の見どころが用意されている。ジョン・バーンサルはパニッシャー役で魅力的な演技を見せる。マーク・ラファロも持ち前の力を発揮し、セイディー・シンクも歓迎すべき新加入だ。ただし、これ以上詳しく話せば、別の宇宙へ追放されてしまうかもしれない。私が参加した試写会では、彼女が演じる役の名前が出ただけで拍手が起きた。同様に、公衆浴場で会議を開く人物の笑えるカメオ出演もあるが、これ以上は聞かないでほしい。
しかし最大の見どころはホランドだ。この役を演じ始めて10年になる彼は、以前にも増して人間味と脆さを感じさせる。ホランド自身もすでに30歳であり、顔に刻まれた自然なしわも、その演技に幾層もの深みを加えている。
物語は当然、ニューヨークから始まる。ここは最も活気に満ち、同時に最も孤独な場所にもなり得る街だ。誰一人ピーターを知らない雑踏の中で、誰からも知られない存在となった彼の新生活を表すには、これ以上ない言葉だろう。人々が知っているのは、スパイダーマンが犯罪と戦う優秀なヒーローだということだけだ。街はかつてないほど安全になっている。
日常的な都市犯罪への対処に加え、ピーターはダメージ・コントロール局と、その局長ビル・メッツガー(トラメル・ティルマン)から、目に見えず、密かに迫る脅威の正体を突き止める手助けをしてほしいと依頼される。率直に言って、この筋書きには最後までそれほど引き込まれない。観客の関心をつなぎ止めるのは、あくまでピーター個人のドラマだ。
例えば、ピーターは自宅でMJに宛てて、2人の愛の物語をつづった手紙を書いている。ある日、MITを卒業したばかりのネッドを見かけ、新しいアパートまで後をつけると、なんとネッドはMJと同居していた。MJは仕事の話を断ったばかりで、ネッドにこう語る。「何か素晴らしいものを待っているような気がしてならないの」
だが、それはピーターなのだろうか。MJには新しい恋人がいる。それを目にしたピーターは落胆し、手紙を渡さないまま家路につく。
スパイダーマンとMJが再び結ばれ、蜘蛛の糸で楽しそうに街を飛び回る姿を、誰もが見たいと願っているのではないだろうか。当然ながら、2人の間に何が起きるのかは明かせない。ほかの多くのことについても同様だ。スパイダーマン映画には、スパイダーマンの粘着性のある蜘蛛の糸に負けないほど厄介なネタバレが絡みついており、それが記事を書く上での難題となっている。
だが、その蜘蛛の糸について言えば……ピーターの身体に奇妙な変化が起こり始める。まず、マグワイア版のピーターのように、突然、蜘蛛の糸が体内で作られるようになる。さらに、目がくらむほど激しい頭痛にも襲われる。実は、DNAのバランスが崩れていることが原因だ。
『シャン・チー/テン・リングスの伝説』のクレットン監督は、マーベル作品での経験を存分に生かしている。テレパシーや憑依を含む複数のサブプロットを巧みに織り合わせ、物語を前へ進めていく。ただし、終盤は20分余り短くできただろう。
スパイダーマンがビッグ・アップルことニューヨークの街を、蜘蛛の糸で飛び回る光景は美しい。しかしホランドの真骨頂は、マスクを外した顔をクローズアップで映す場面にある。彼が演じるスパイダーマンが、以前よりも成長し、成熟した存在になったことを何度も示してみせる。
物語は、コミュニティと支え合いをうたって幕を閉じる。誰も一人きりでは生きていけないというメッセージだ。それは最後のショットで、素朴で温かな握手として見事に表現されている。その場面は、思いがけないほど胸に迫る。映画化から四半世紀を経てもなお、『スパイダーマン』はまだ驚きの種を隠し持っている。
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント配給の『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』は、7月31日に日本公開予定。映倫区分はG。上映時間は145分。評価は4つ星中2.5星。
By JOCELYN NOVECK AP National Writer




