3人の日本人が受賞、ドイツの音楽賞「オープス・クラシック」授賞式に寄せて

Mo Wüstenhagen

◆授賞式の様子
 そのような経緯もあり批判の対象になりやすい同賞だが、日本人3人の受賞を受け、純粋にその功績を評価し、音楽を楽しんでみようと授賞式ガラコンサートに臨んだ。コンツェルトハウスをぐるっと囲む大工事中のため、正面玄関までの大階段に敷かれる恒例の赤絨毯はなく、狭いホワイエに赤絨毯敷きの写真撮影スペースを設けただけのプレイベントだったが、ホール内部では滞りなくガラコンサートが開催され、テレビカメラが各所で我が物顔に雑音を立てていた。

 ドイツの女性指揮者ヨアナ・マルヴィッツが指揮するコンツェルトハウス管弦楽団は、コルンゴルト作曲『海賊ブラッド』の序曲を演奏してオープニングを飾った。この日のコンサートマスターは日下紗矢子で、3人の受賞者に続く4人目の「選ばれた日本人」に数えたい。

司会者とコンマスの日下紗矢子|Monique Wüstenhagen

 「今年の歌手」女性部門で選ばれたアスミク・グリゴリアンは、プッチーニのオペラ『蝶々夫人』より『ある晴れた日に』を歌う。革のような黒い衣装で、日本人とは程遠い容姿だが、蝶々さんの心は鮮明に表現されている。ここでも「日本」が選ばれたのは偶然だが、現在ブレイク中の彼女の声さばきを実感できる貴重な歌唱が聴けた。

アスミク・グリゴリアン|Monique Wüstenhagen

 続いて「今年の器楽奏者」部門受賞者の1人、世界的バイオリニストのアンネ・ゾフィー・ムターが、先程の赤絨毯の上でも映えた可愛らしい緑のドレスで登場した。ジョン・ウィリアムズの『レイダース/失われたアーク』のマリオンのテーマを弾くのを生で聴けたのは、このようなテレビショーならではとも言える。

アンネ・ゾフィー・ムター|Monique Wüstenhagen

 そして「今年の歌手」男性部門で選ばれたカウンターテナーのヤクブ・ヨゼフ・オルリンスキは、彼がブレイクダンスを踊る映像が流れた後、イタリア古典歌曲としても知られる『アマリッリ』をテオルボの伴奏で歌った。古典的な静の世界と現代的な動の世界、ギリシャ彫刻のような男性的ビジュアルと、女性のような頭声で歌う、そのすべてのギャップがすでに一種のショーだ。

ヤクブ・ヨゼフ・オルリンスキ|Markus Nass

Text by 中 東生