3人の日本人が受賞、ドイツの音楽賞「オープス・クラシック」授賞式に寄せて
昭和の時代に日本で流行った「レコード大賞」を彷彿とさせるオープス・クラシック賞が日本人3人に授与された。「たかが音楽」といえども時事問題と切り離せない、そんな背景を、授賞式を通して考えてみたい。
◆ヨーロッパで認められた3人の日本人
10月8日、ドイツ・ベルリンのコンツェルトハウスでオープス・クラシック賞授賞式が行われた。今年で6回目となるオープス・クラシック賞は、1994年に始まったエコー・クラシック賞を前身とし、CDなどの音源を基にアーティストの活躍を評価して授与するドイツの音楽賞である。今年は全27部門のうち3部門で日本人が選ばれた。「若手アーティスト」部門に選ばれたのはピアニストの藤田真央で、ソニー・クラシカルから出た『モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集』が受賞作品だ。
このアルバムが天下のソニーから出るという話題は、2021年秋の音楽業界でも驚きのニュースだった。日本人ピアニストとして初めて同レーベルと専属ワールドワイド契約を結び、そのデビュー作から全曲版に挑戦させるということは滅多にないからだ。現在はそれを裏付ける活躍を世界中で見せている藤田だが、この日は日本でのコンサートと重なり、授賞式で演奏を聴けなかったのが残念だ。
2人目は「コンサート録音」部門で選ばれた、コンチェルト・ケルンのコンサートマスター平崎真弓だ。同オーケストラと録音した「ピゼンデル」が評価された平崎は、ザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学の教授も務めている。
3人目は日本よりもドイツでの評価の方が高かった印象のある故・坂本龍一だ。「映画音楽/スコア」部門で、ネットフリックスのアニメシリーズのサウンドトラック『exception』によって受賞した。授賞式のオープニングで、まずはその前日にイスラム組織ハマスの攻撃を受けたイスラエルへの連帯を表明した司会者は、昨年急逝したドイツ人ピアニストのラルス・フォークトと坂本に対し、追悼の意を込めて特別に言及していた。