『バービー』と『オッペンハイマー』に恐ろしい共通点? 同日公開で大人気の2作品
◆2作品の恐ろしい共通点を指摘する意見も
興行成績の競い合いやインターネットミームは、真逆の2作品の世界観がベースとなって話題を呼んでいるが、ベーツ大学で環境学を教えるタイラー・A・ハーパー(Tyler A. Harper)助教は、ワシントンポストへのオピニオン記事で、2作品の恐ろしい共通点について指摘する。彼は「核時代の立役者であるJ・ロバート・オッペンハイマーと、世界中の埋立地に滞留するまでに3杯分以上の石油を消費して生産されるバービーという玩具が、ともに危機的な時代の幕開けを物語っている」と主張する。彼は環境学の教員として科学技術の歴史を研究してきたという専門的知見から、人類の地質学的記録を5.4億年までを遡り、「専門家たちは、マイクロプラスチックや放射性同位体のようなものが、新しい時代「人新世」の地層学的な目印になりうるかどうかを議論している」と論ずる。1950年代は原爆と核実験に代表されるプルトニウムの時代であり、消費財の大量生産と結びついたプラスチックの時代でもある。プラスチック(PVC)製のバービーが発売されたのは1959年。初年度に25万体以上売れたというバービーは、現在1分に100体も売れているという。
ハーパーの主張は、2作品の共通点というわけではなく、2作品の主題であるバービーと核というものが生まれた歴史的文脈における共通点の指摘ではある。しかし、このまったく違うこの2つ映画をエンターテインメントとして楽しみつつも、21世紀にも続く、20世紀を象徴する技術や思想について内省するというのも、一つの映画鑑賞のあり方かもしれない。
- 1
- 2