なぜアート作品を上場? 株式市場を開設した企業の狙いとは

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 リヒテンシュタインで、芸術作品のための株式市場「アーテックス株式取引所(Artex Stock Exchange)」が開設。今月、芸術作品が上場し、個人投資家が作品の株式を購入できるようになる。

◆絵画の上場とは
 7月中旬、アイルランド生まれのイギリス人画家、フランシス・ベーコンの作品群の一つである3枚続きの絵画『ジョージ・ダイヤーズの肖像のための3つの習作』が、絵画作品としては世界で初めて上場する。上場後は、今までアート取引市場に参加することのできなかった一般の人々が、数万円という価格から作品に投資し、部分所有することが可能になる。企業の株を買うのと同じような感覚で、金融機関などを通じて芸術作品の株式を購入できるというのは画期的。芸術作品はそれぞれが法人化され、法人として株式を発行するという仕組みだ。

 上場を実行するのが、リヒテンシュタインに拠点に置く、アート取引に特化した投資会社のアーテックス(Artex)だ。彼らは、アート株取引に参加したすべての人に対して、統制され、流動性があり、透明性の高い株式取引場へのアクセスを提供することで、アート市場への投資機会を民主化することを使命としている。芸術作品の分割所有を可能にするサービスを提供する会社はほかにもあるが、絵画を上場させるというやり方はアーテックスが初めてだ。


 ベーコンの絵画の市場価値は約5500万ドル(約76億円)。最後に取引されたのは2017年で、アート取引の専門会社クリスティーズのオークションにかけられ、5200万ドル近くの値で落札された。オークション後は、個人所有となり、基本的に一般公開されることはなくなってしまった。

Text by MAKI NAKATA