映画『スーパーマリオ』、世界大ヒットの理由 批評家の厳しい声が逆に?
◆長年育んだマリオの世界観をそのまま映画に
今作ではニューヨークで配管工として働いているマリオとルイージの兄弟が、土管に飲み込まれてキノコ王国に迷い込む。はぐれた兄弟同士の結束が試されるなか、邪悪なクッパの気配が。マリオはピーチ姫やキノピオたちとともに危機に立ち向かう。
任天堂代表取締役フェローの宮本茂氏は公開にあたり、「この映画は任天堂の開発チームとイルミネーションの制作チームが一緒になって、じっくりと時間をかけて作りました」「観ていて楽しいのと同時に、ゲームを遊んでいただいた時の感覚までよみがえると思います」とのコメントを寄せている。映画への思い入れが伝わるかのようだ。
◆観客はヒーローずくめの映画界に変化を求めていた
今作の成功要因は、アメコミ原作作品一色の映画界に新鮮な風を吹き込んだ点にあるようだ。米メディアリサーチ会社の戦略担当ディレクターは、ニューヨーカー誌に対し、「マーベル系のスーパーヒーローが延々と続くことに観客が飽き、何か違うものを求めているのではないか」との見解を示している。
また、マリオの世界観を随所に感じられる点も観客に評価されたようだ。米映画評論家は同誌に対し、『大乱闘スマッシュブラザーズ』を想起するバトルシーンなど、マリオが出演した歴代ゲームタイトルへのオマージュがふんだんに盛り込まれていると語っている。
ゲーム情報サイト『CBR』(5月6日)は、任天堂の宮本氏の見解として、批評家の間で厳しい評価が相次いだことがかえって興味をかき立て、多くの観客に観てもらえたとの考え方を紹介している。映画レビューサイト『ロッテン・トマト』の批評家によるスコアは59%とかなり厳しいが、一般観客による評価は96%と大健闘している。批評家からはストーリー性に乏しいとの声がちらほら聞かれるが、ファンたちのレビューを見る限り、家族で純粋に楽しむことができたとの評価が多いようだ。
タイム誌は、ネット上のファンの熱狂が映画の一大旋風に一役買っていると見る。2020年に映画制作が発表されてから新着情報が出るたびにファンたちが素早くソーシャルメディアで反応。映画公開後はツイッターやTikTok、レディットに多くのイラスト、コスプレ画像、ミームなどがあふれた。TikTokではハッシュタグ「スーパーマリオ・ムービー」と「スーパーマリオブラザーズ」が合計60億回以上視聴されている。
世界をとりこにしている『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は、日本でも現在上映中だ。『スーパーマリオブラザーズ』や『マリオカート』など往年のシリーズと、ぜひ大画面で再会しよう。
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