海外批評家からも高評価の『すずめの戸締まり』 英紙「最も不気味なほど美しい」
◆古く美しい記憶をめぐる冒険
写実的な表現で定評のある新海監督は、最新作でもその美しさで海外の心を揺さぶった。米ニューヨーク・タイムズ紙(4月13日)は「水しぶきや草の葉の一つ一つに生命力を与える、この世のものとは思えないような感情的な色調」が本作でも健在だとしている。
近年の新海作品が重点を置いているように、物語性も『すずめ』の魅力だ。ロサンゼルス・タイムズ紙は、古い記憶がこの作品のテーマの一つになっていると見る。各地の危険な「扉」を巡りながら、すずめは幼い時分に出会った母親らしき女性との触れ合いに繰り返し思いをはせる。
あの記憶は何だったのか——。災害に立ち向かう旅は、すずめにとって不思議な記憶を解き明かす旅でもある。同紙はさらに、すずめたちが訪れる土地に込められた記憶や大震災をめぐる過去などが相まって、青春ファンタジーの隅々に、ほろ苦く感傷的な深海節が発揮されていると感じたようだ。
◆ますます国際的に認知度を高める新海監督
新海監督の名は、海外でもますます広く認知されるようになってきた。ニューヨーク・タイムズ紙は「その卓越したアニメーションにより、しばしばあの宮崎駿の後継者との賛辞を受けている」と述べる。
テレグラフ紙は監督を「日本のアニメシーンにおける著名なカルト的ヒーロー」であると紹介し、「彼の映画は、穏やかさと熱狂性の見事な融合である」と評価している。
ロサンゼルス・タイムズは新海監督について「才能に恵まれた日本の作家・監督」であると紹介し、その繊細なタッチが『すずめ』でも冒頭から存分に発揮されていると評価している。作品はダークブルーの夜空にきらめく星々の美しいカットで幕を開けるが、これが同監督による2016年の『君の名は』を想起させたと同紙記者は言う。同作では夜空の流星をめぐる大混乱を描いたが、今作でも冒頭から「またしても天変地異を予感させる」と胸を高ぶらせたようだ。
昨年11月からロングラン上映されてきた『すずめの戸締まり』は、5月27日に終映を迎える。未見の方は躍動するキャラクターと迫力のアクションをぜひ映画館で楽しみたい。
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