米風刺ニュース番組の司会者が降板へ 過渡期を迎えた深夜トークショー業界

Jae C. Hong / AP Photo

 米国の人気番組『ザ・デイリー・ショー』の司会を務める南アフリカ出身のコメディアン、トレバー・ノア(Trevor Noah)が先月、番組から引退することを発表した。そのメッセージとは。

◆トレバー・ノアの活躍
 ノアは欧州系の白人の父親と黒人の南アフリカ人の母親の血を引く南アフリカ出身のコメディアンだ。母国ではさまざまなエンターテインメント番組の司会を務めるほか、『トゥナイト・ウィズ・トレバー・ノア』という題の看板深夜番組を展開するなど、幅広く活躍していた。ノアのウェブサイトには、彼は「アフリカで最も成功しているコメディアン」と紹介されている。

 ノアは2014年に、米国の人気コメディアン、ジョン・スチュアート(Jon Stewart)が司会を務めていた、米国の政治ニュースを風刺したテレビ番組『ザ・デイリー・ショー』の「特派員」として番組に参加。その翌年、スチュアートは1999年から司会を務めてきた当番組を引退し、2015年にノアが後任として司会の座についた。

 先月末、番組内で自ら司会の座から退くときが来たと発表したノア。司会を務めてきた7年間を振り返り、自分がスチュアートの後任として番組を始めた当初は、多くの人々が自分や自分のチームに、この仕事が務まると思っていなかったという。米国においてはほぼ無名の「アフリカ人」がスチュアートの後任となるという考えは、当時はとっても突拍子もない考えだったのだ。

 7年の間に、トランプ政権の誕生、パンデミックの発生、ブラック・ライブズ・マターの運動など、政治経済社会においてさまざまな大きな動きがあるなか、ノアはスチュアートとは違う彼なりの視点で、国際社会という文脈における米国の動きを風刺してきた。たとえば、トランプ政権の独裁的な動きに対して、アフリカ各地の独裁者と比較してみせたり、パンデミック中は自分のアパートから番組を続け、ありのままのアフロヘアで登場し続けたりした。さらに、ブラック・ライブズ・マターをはじめとした人種差別の問題については、冗談を交えることなく真面目な姿勢で自らの考えを発信することもした。

Text by MAKI NAKATA