王国の女性戦士軍、奴隷めぐる部族間抗争……西アフリカの歴史に光を当てる映画『ウーマンキング』

左からプロデューサーのキャシー・シュルマン、キャストのトゥソ・ムベドゥ、ヴィオラ・デイヴィス、
監督のジーナ・プリンス・バイスウッド(9月8日)|Chris Pizzello / AP Photo

 9月16日、西アフリカのダホメ王国に実在した女性戦士軍アゴジェを題材にした映画『ウーマン・キング(The Woman King)』が公開された。いままでにないハリウッド映画としての意義とは。

◆題材となった実在の女性戦士軍アゴジェ
 『ウーマン・キング』の舞台は、17世紀から19世紀にかけて西アフリカに実在したダホメ王国。現在、ベナン共和国となっている地域だ。映画の登場人物の多くはフィクションだが、『スター・ウォーズ』シリーズ出演の英国人俳優ジョン・ボイエガ(John Boyega)が演じるゲゾ(Ghezo)は、1818年から58年まで国王として在位し、ダホメ王国の全盛期を築き上げた実在の人物だ。そして、ゲゾの下でその存在感を発揮した女性戦士軍がアゴジェ(Agojie)であり、『ウーマン・キング』のストーリーにおける主役的な存在だ。

 スミソニアンの記事によると、アゴジェはその最盛期には6000人ほどの兵士を抱えており、敵が「恐ろしいほどの勇敢さ」と言うぐらい猛烈な戦闘能力を持っていた。アゴジェは、ギリシャ神話に出てくる女性戦士となぞらえて、アマゾン(Amazon)と呼ばれることもある。アゴジェに関する最初の記録は1729年に遡る。その起源は、象をしとめるための猟師軍として編成されたという説と、18世紀初頭、兄弟である王の死去によって王座についた女性、ハングべ(Hangbe)の元で編成されたという説がある。

 ヴィオラ・デイヴィス(Viola Davis)演じる『ウーマン・キング』の主人公、アゴジェのリーダーのナニスカ(Nanisca)や、南アフリカ人女優のトゥソ・ムベドゥ(Thuso Mbedu)が演じる新人兵士のナウィ(Nawi)は、実在の人物ではないが、ナニスカやナウィという名前の人物がアゴジェに存在したことは記録に残っている。

 強靭で勇敢なアゴジェは、2018年に公開されたマーベル映画『ブラックパンサー』に登場するワカンダ王国の女性戦士部隊であるドーラ・ミラージュ(Dora Milaje)の基にもなっている。ドーラ・ミラージュは、今年秋に公開される同映画の続編にも登場する予定だ。

Text by MAKI NAKATA