猫ゲーム「Stray」、現実世界の猫を助ける ゲーム配信に寄付金

Annapurna Interactive via AP

 新感覚のビデオゲーム「Stray(ストレイ)」に登場するバーチャルなヒーロー猫がすることといえば、錆びたパイプにまとわりつく、怪しげなぬかるみを飛び越える、廃墟と化したような街で謎解きをすることだが、じつはそれだけではない。この向こう見ずな茶トラ猫は、現実世界の猫の手助けもしているのだ。

 ゲーマーはオンライン募金プラットフォームを活用してStrayをプレイしながらその模様をライブ配信し、動物保護施設や猫関連の慈善団体に提供する資金を集めている。ゲームパブリッシャーの「アンナプルナ・インタラクティブ」も猫の保護・里親募集を行っている2つの団体に景品用のゲームを提供し、ニューヨークの猫カフェを貸し出してStrayの販促を行った。

 慈善を目的とするゲームプレイのライブ配信は以前からあったものの、猫好きがStrayに寄せた反響は類例がない。ストリーミングプラットフォーム「Twitch(ツイッチ)」によると、配信開始日に視聴・放送されたゲームとしては歴代4位の人気だった。

 古びた工業地帯で冒険好きな猫が手すりでうまくバランスを取ったり、パソコンのキーボードの上を歩いたり、棚から物を落としたりしながらパズルを解き、敵をかわしていく模様を視聴者は楽しむ。あるクリエイターによると、開発チームメンバーの約8割が「猫好きで実際に飼っている」ほか、本物の茶トラ猫やペットの猫たちもゲームを生み出すきっかけになったという。
 
 フランス南部モンペリエにあるゲームスタジオ「ブルートゥエルブ」のプロデューサーを務めるスワン・マルタン・ラゲ氏は「動物やペットを飼うことには責任が伴うことを知ってもらいながら、実生活で野良猫を助けたいと思う人が現れてくれれば、と心から願っている」と話す。

Annapurna Interactive via AP

 マーケティングスペシャリストのブランダン・ゲプソン氏によると、7月19日のゲーム発売前にアンナプルナ・インタラクティブがネブラスカ動物愛護協会に提携を呼びかけると、協会はその申し出に飛びついたという。同氏は「ゲーム全体、そしてゲームを取り巻く文化全体が猫への愛情に満ちている。ゲームは保護施設、私たちの使命とうまく融合した」と述べている。

 同施設は景品用にゲームを4本入手した上で、抽選にエントリーするのに5ドル(約670円)の寄付を募った。ゲプソン氏によると、1週間で7000ドルの資金が集まったほか、ドイツやマルタからの寄付者を含め550人の寄付者の大半は新規の資金提供者だった。同社も施設に1035ドルを寄付している。

 同氏は「双方にとってメリットがあった。ゲーム会社には良い宣伝効果があったほか、当方は新規の寄付者を得ることができた」と述べている。

 さらにアンナプルナ・インタラクティブは、ニューヨークにある猫カフェ兼里親募集機関である「ミューパーラー」を週末に運営する権利を買い取り、同時に1000ドルを寄付した。予約をしてカフェを訪れた人はStrayのキャラクターグッズを購入したり、猫に囲まれながら20分間ゲームをプレイしたりすることができた(SNS動画にあるように、猫もこのゲームに夢中になる)。

 同社のマーケティング・ディレクター、ジェフ・レガスピ氏は「ゲームの発売が社会に何か良い影響を与え、できれば新しいペットを買い求めるのではなく里親になってもらうことに意識を向けるようにするのは理にかなったことだ」と話している。

 数万匹もの動物を毎年保護しているノースショア・アニマル・リーグ・アメリカでは、Stray経由の引き合いが増えることはなかったとしているが、とあるゲーマーから800ドルもの寄付を受け取ったという。

 偶然にも同施設ではStrayが発売されたその週に、動画ストリームから寄付を受け取れるプラットフォーム「Tiltify(ティルティファイ)」にプロフィールを設定していた。このプレーヤーが施設に寄付をしてくれたおかげで、当初の目標金額だった200ドルを達成することができた。

 保護施設のシニアデジタルマーケティングディレクター、キャロル・マルケザーノ氏は「Tiltifyとライブストリーミングは、新たな視聴者を取り込める斬新な手法だと考えている」と述べている。通常、施設がライブストリーミングの調整をするにはネットの著名人に連絡を取る必要があり、しかもそれには多大な労力を要する。

 TiltifyのCEOを務めるマイケル・ワッサーマン氏によると、9つほどのキャンペーンがStrayに言及している。やはり慈善を目的とするライブストリームを展開している「ジャスト・ギビング」でも、Strayに関連するキャンペーンが2つあるとしている。

 ネブラスカのゲプソン氏は、オマハに住み「TreyDay1014」というハンドルネームを持つ人物にネットで連絡を取り、慈善ライブストリーミングを実施することにした。姓を公表していないトレイ氏は猫を2匹飼っており、うち1匹は保護施設から引き取った。

 同氏はTwitchでライブ配信を行い、自分の猫キャラがほかの猫の尻尾を叩き、手すりの脇で踊る様子を紹介した。

 キャラクターが恐ろしく長い距離を飛び跳ねたとき、「自分の猫が外でこんなことをしたら怒るだろう」と話した。その直後、錆びたパイプが折れ、痛々しくも猫は暗闇の中へ落ちてしまった。

 猫が落下した後に25ドルが寄付されたのを皮切りに、トレイ氏はネブラスカの保護施設のために30分ほどで100ドル超の資金を集めた。4時間半のゲーム配信が終了した時点で、寄付金は1500ドルに達した。もともとの資金調達目標は200ドルだった。

 同氏は「ただゲームをするだけでなく、もっと善いことのためにこのプラットフォームを使えるとは驚くばかりだ」と話す。

By THALIA BEATY Associated Press
Translated by Conyac

Text by AP