北京五輪の人工雪問題 選手への危険性、環境への影響

フリースタイルスキー、スノーボードなどの会場となる張家口市のスキー場(21年11月27日)|Mark Schiefelbein / AP Photo

 2月4日から北京冬季五輪が開幕する。スキー競技などが行われる北京郊外の会場では天然雪がほとんど降らないため、人工降雪機をフル稼働して準備中だ。しかしこれによる水不足や環境破壊の可能性に加え、人工雪が引き起こす選手のけがのリスクも指摘されており、雪の降らない都市での開催の是非が問われている。

◆懸念される環境への影響
 ブルームバーグは、気候変動により十分な降雪のある国が減少しているため、人工雪は冬季五輪の定番となったと述べる。2014年のロシア・ソチ大会では約8割、2018年の韓国・平昌大会では約9割が人工雪だったという。北京大会は完全に人工雪に依存する最初の開催地になるということだ。

 もっとも、会場となる北京市と河北省張家口市は乾燥した地域で、降雪の話以前に雪を製造するのにも適していない。過去40年間の冬の平均降水量はわずか7.9ミリで、12月の降水量は欧州の有名スキー場であるダボスの9分の1だ。中国は冬季五輪誘致を機会に張家口を中国版アルプスともいえる冬の一大行楽地にしようとしてきたが、この地域の半分以上は水不足が深刻だという。(ブルームバーグ)

 ストラスブール大学の地理学者カルメン・デヨング氏は、大会期間中に十分な人工雪を作るため、オリンピックサイズのプール800個分、約200万立方メートルの水が必要になる可能性があるとしている。中国は会場近くに11のタンクを建設し、降雨や雪解け水などで53万立方メートルの水を集め、近隣の貯水池からもパイプで水を送る予定だという。しかし専門家はこの方法でも自然な水循環を妨げるとし、環境や張家口の水源に与える負担は大きいと批判的だ。(同)

Text by 山川 真智子