『くるみ割り人形』が消える?「人種差別的」と欧州のバレエ団が公演中止・改変

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◆BLM運動からバレエ界に広がったウォーク
 実は『くるみ割り人形』のこのような側面に問題意識を示したのは、同バレエ団が最初ではない。スコティッシュ・バレエ団は昨年10月、ブラック・ライブズ・マター運動を支持する反人種差別の立場から、衣装や演目などの見直しを行った。その結果、同バレエ団は今年のツアーではアラビアの踊りと中国の踊りのステレオタイプ的な部分を省くことを決めている。英国のロイヤル・バレエ団も同様の決定をし、続いてさらに同作品中にあるハーレムのシーンも変更することを決めた。(タイムズ紙、11/25)

◆「中国人は問題にしていない」との反論も
 だがこの判断に対しては反論も上がっている。中国系カナダ人音楽家のジャン・ジャンは、中国のバレエ団が『くるみ割り人形』を問題なく上演しているとして、「くるみ割り人形が中国人に対して人種差別的だと主張する人々は無知で傲慢だ」とツイートし、ウォーキズムを強く非難した

 この一連の動きは、かつて『ちびくろサンボ』が書店から姿を消したことを思い出させる。芸術や文学に描かれたものが現代の価値観と相反するとき、抹消するしか手立てはないのか? 許容ラインが引けるとすれば、どこに引くべきなのか? そもそも歴史を検閲し、キャンセル・カルチャーを繰り返すことは、人種差別のない社会をもたらすことになるのか? 検討すべき点は多い。

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Text by 冠ゆき