『くるみ割り人形』が消える?「人種差別的」と欧州のバレエ団が公演中止・改変

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 チャイコフスキーの『くるみ割り人形』はクリスマスにちなんだ内容ということもあり、世界各地のバレエ団が12月公演を恒例としている。ところが、ベルリン国立バレエ団は先日、この『くるみ割り人形』を演じないと発表した。その理由は同作品が「人種差別的」だからというものだ。だが不適切と判断されたものは、抹消すればそれで済むのだろうか?

◆植民地主義の名残
 ベルリン国立バレエ団が『くるみ割り人形』を人種差別的だと判断した理由は、第2幕におけるアラビアの踊りと中国の踊りにある。バレエ『くるみ割り人形』の初演は1892年。台本と振り付けはマリウス・プティパとレフ・イワノフによるもので、ベルリン国立バレエ団ではこのオリジナルに極めて近い演出を採用してきた。

 だが渡航経験を持たない異国について振付師の想像で作られたこれらの踊りは、誇張されたステップや化粧を含んでおり、同バレエ団のディレクター代理を務めるクリスティアーネ・テオバルト氏は、「民族に関するステレオタイプを含む」と判断。現代においては「各要素に問題がないか見直す必要がある」と考えた。(フィガロ紙、12/1)

 テオバルト氏は同じ理由で、インドを舞台にした『ラ・バヤデール』にも問題があると考えている。また俗にジプシーと呼ばれるロマが登場する『ドン・キホーテ』については、「ロマ社会と連絡をとり、背景情報を適切に含むプログラムを作り直し」ている。(ディアパゾン、11/26)

Text by 冠ゆき