過去の靖国写真で大炎上・袋叩き 中国人俳優、廃業の危機に

Lãng lãng đinh / Wikimedia Commons

◆国営メディア、芸能協会が糾弾声明
 しかしながら、事態の鎮静化を図った俳優側の思惑は大きく外れる。中国共産党の機関紙・人民日報がSNS上で「この謝罪は」と張哲瀚の謝罪文書を貼り付けた上で、「許されるものではない」「重い代償を払わなければならない」と批判(人民日報・微博)。張哲瀚はこれに返信する形で「批判を真摯に受け止め」反省し、共産党と祖国への愛を強固なものとして、今後行動に移すとコメント。しかしながら今度は、中国中央テレビのニュースSNSが「張哲瀚は歴史の傷跡に触れ、国民感情を傷つけた、『無知だった』では済まされない」とコメントを発信。さらに、中国共産党中央軍事委員会の機関紙・解放軍報が「今日トレンド入りした2つのニュース」として、「日本の岸防衛大臣の靖国神社参拝、そして張という芸能人が謝罪文を発表したこと」と言及。改めて、俳優の行動を非難した。
 
 事態は悪化の一途をたどり、謝罪から2日後、中国芸能5大協会のうちのひとつ、中国文化・観光部の傘下にある中国演出行業協会が、公告文書を発表。張哲瀚の靖国神社訪問は、重大な過ちであり、国民感情を傷つけたばかりでなく青少年にも悪影響を与える、として会員へ張哲瀚のボイコットを呼びかけた(China Daily)。

◆契約打ち切りから封殺まで
 こうした動きに前後して、企業側も素早く手を打った。メイベリンやクリニーク、コカ・コーラ、ニベア、COSTAコーヒー、グリコ中国など、国内外の有名ブランド20社以上が、広告起用を中止、イメージキャラクターの契約を解消すると発表した(MINNEWS)。折しも騒動が起きたのは「中国のバレンタインデー」とされる旧暦の七夕の前日。張哲瀚をブランドアンバサダーに起用していた日本の宝飾品メーカーTASAKIや、デンマークのジュエリーブランドPANDRAは、贈り物商戦真っ只中の騒動に、素早く対応せざるを得なかった。ボイコット運動に巻き込まれ、不買運動に発展しかねないからだ。実際に、中国のネットユーザーによる、張哲瀚を起用した広告を取り下げていない企業探しも行われている。

 張哲瀚主演の大ヒットドラマ『山河令』は中国国外でも配信が始まっているが、中国メディアでは出演者名から、張哲瀚の名前は削除されている。また、1800万人以上のフォロワーがいたSNS(微博)のアカウントと、彼のマネジメント会社のアカウントは、騒動が始まって4日目に早くもブロックされ、閲覧不可となった。微博の運営サイドの発表によると、芸能協会と同様の理由で、「張哲瀚本人のアカウントと関連アカウントの閉鎖を決定した」とし、同時にネットユーザーに対して、「歴史を忘れてはならない」と呼びかけ、当局は今後も有害なアカウントや情報源の監視と排除を、厳しく行うと述べた。

Text by 佐藤さとみ