サッカー選手への人種差別と不寛容の広まり PK失敗のイングランド代表が被害

ラッシュフォードの壁画を修復するストリートアーティスト(7月13日)|Jon Super / AP Photo

 2020年欧州選手権(ユーロ2020)の決勝戦で、ペナルティ・キック(PK)を外した3名の黒人選手に向けた差別発言があり、それに対しての非難と選手を擁護するメッセージが広まった。SNS上などでの差別発言がなくならない一方で、差別に対しての不寛容な姿勢も広まりつつある。

◆差別被害にあったイングランド代表
 7月11日に行われたサッカー、ユーロ2020におけるイタリア対イングランドの決勝戦。試合は1対1でフルタイムとなり、30分の延長戦でも決着がつかずに、PK戦に持ち込まれた。各チーム5本のキックのうち、始めの2本の終了後は2対1でイングランドが優勢であった。しかし残りの3本ではイタリアが2ゴールを決め、イングランド側は残りの3名全員が外し、イングランドは優勝を逃した。この結果に対し、ツイッター上では「3人のクソ黒人(f**king niggers)が外しやがった」といった人種差別的な罵倒発言や、彼らが真の「イギリス人」ではないといったようなニュアンスの差別発言があった。

 差別被害を受けたのはイングランド代表の若手、23歳のマーカス・ラッシュフォード(Marcus Rashford)、21歳のジェイドン・サンチョ(Jadon Sancho)、19歳のブカヨ・サカ(Bukayo Saka)だ。ラッシュフォードは、カリブ海にある元英国領のセントクリストファー島にルーツを持つ。サンチョの両親は、トリニダード・トバゴからの移民。そしてサカの両親はナイジェリアからの移民だ。3名ともイギリス人で、それぞれ欧州のチームに所属している。ナイジェリアでも人気があるサカは、ナイジェリアに対する敬意を示しつつも、イングランドのチームを選んだ。ラッシュフォードは、サッカー選手として活躍する傍ら、慈善活動にも積極的に取り組んでいる。パンデミック期間中には、貧困家庭の子供たちに無料給食を提供するなどの活動を行った。その功績が認められて、昨年10月には大英帝国勲章の一つ、メンバー(Member of the Order of the British Empire:MBE)の称号が与えられた。マンチェスターにある、ラッシュフォードを讃える壁画は、試合後、落書きで汚損された

Text by MAKI NAKATA