世界を席巻、BTSの人気の秘密は? 他グループと一線を画す独自の戦略

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◆K-POPの伝統を打破
 BTSのもう一つの大きな特徴は、そのユニークな音楽性にある。従来K-POPはヒップホップを中心とし、ポップ、エレクトロポップ、ロックなどのジャンルと融合させることで発展してきた。BTSはこれらに加え、本格的なラップを取り入れている。これまでもラップ調のK-POPは存在したが、BTSの場合は自らラップの作詞を手掛け、本格的に歌い上げるメンバーを擁しており、これがジャンルの幅と深さを大きく広げた。歌手としての実力も高く、韓国の文化人類学の専門家は、BTSはアイドルグループではなくヒップホップバンドとして活動を開始したと述べているほどだ。

 また英BBCは、従来ラブソングに偏重する傾向が多かったK-POPの伝統をBTSが打ち破っており、これも成功要因になっていると見ている。いじめ、エリート主義や精神衛生など、これまで大衆向けソングでは触れられなかった挑戦的なテーマを曲に取り込むこともしばしばだ。

 新旧のジャンルを横断して独自のワールドを構築するBTSを、伝説的なバンドになぞらえる動きもある。芸能情報を伝えるタレント・リキャップ誌は、アメリカでBTSがこれほど浸透した理由として、ビートルズとの類似性があるのではないかという大胆な仮説を披露している。ビートルズはイギリスのバンドでありながらアメリカ国内で熱烈な支持を得たが、その特徴はどこか懐かしく、同時に新しさを感じさせるというものであった。60〜70年代にアメリカの若者の心を奪ったビートルズと同様に、BTSは新旧のジャンルを融合した独自のフレッシュな世界を構築することで、現代のアメリカを虜にしているのではないかと同誌は捉えているようだ。

◆SNS活用で身近な存在に
 こうしたオリジナリティあふれる音楽性と活動スタイルに加え、現代ならではのSNS重視の戦略もBTS人気を支えている。米ビルボードの『ソーシャル50チャート』において現在までに計202週、首位を獲得している。これはフェイスブック、ツイッター、インスタグラムおよびユーチューブなどでの露出をランク付けしたもので、SNSでのプレゼンスが彼らの存在を世界に広める貴重な場となっていることを裏付けている。しかしそのSNS戦略もユニークであり、これまでの韓流アイドルとは一線を画すものだ。一般的には、所属事務所がマーケティング戦略の一環として、アイドル然としたイメージを拡散することが多い。これに対しBTSの場合は、悩みを抱えたふつうの人としての片鱗をSNSで覗かせる。WSJ紙の分析では、むしろファンたちは自分と同じ一人の人間としてBTSのメンバーに魅力を感じているのだという。

 BTSのツイッターのフォロワーは3030万人、インスタグラムでは3241万人となっており、異例のファンベースを抱えている。熱烈なファンを抱え、SNSを通じてファンとの心理的距離をうまく縮めることで、世界中に支持層を広げている模様だ。

Text by 青葉やまと