『どうぶつの森』に癒やされる人々、海外でも続出「完璧なタイミング」「純粋な幸福感」

Vantage_DS / Shutterstock.com

♦︎コロナで外出禁止中、需要にピタリ
 社会的距離を保持するため、多くの人々がいまなお友人たちと物理的に会うことができない状況にある。偶然にも外出禁止令の発令に前後して発売された『あつ森』は、思わぬ形で世界の人々のストレス軽減に貢献することとなった。

 米CNN(3月30日)では、フロリダ州に住む30代男性の例を取り上げている。ふだんは公益会社のプロジェクトマネージャーとして働くこの男性は、これまで同作をプレイしたことはなかった。しかし、自宅隔離中にプレイに熱中する例が続出しているという話題をネットで見かけ、興味を惹かれて購入した。いまでは同作の虜となったほかの友人たちとともに、島での暮らしに日々勤しんでいる。「電源を入れると多くの友人がオンラインになっていて、誰も彼もが『どうぶつの森』をプレイしている」と彼は語る。「全員が同じゲームを立ち上げている、こんなことはいままでに見たことがないと思う」との言葉から、いかに異例のヒットとなっているかがうかがえる。彼に限らず、ネット掲示板『レディット』はゲームのヒントやアドバイスなどを交換する人々で賑わい、愉快なシーンを捉えたスクリーンショットがツイッターに続々と流れるなど、オンラインでの活動も盛況だ。

 米NBC(3月30日)も、塞ぎ込みがちな自宅待機中の人々の心を『あつ森』が潤していると報じている。「完璧な発売時期と癒やされる全年齢向けのシナリオで、自宅隔離中の国をたちまち魅了した」「社会的距離の保持をしているこの時分、家を建てて木を植えるだけの平穏な島への旅は、完璧な気晴らしになることが判明した」と記事は述べている。ゲーム内に流れるゆったりとしたトーンは、図らずも緊張下に置かれた人々の心の拠り所となっているようだ。

♦︎まるで極上のマットレス
 癒やされるようなゲーム作りは、外出禁止にあわせて行われたというわけではない。今作登場以前も『どうぶつの森』シリーズは、そののどかなプレイ感覚を特徴としてきた。NBCはシリーズについて、ノンリニアなゲームプレイが伝統になっていると解説している。ノンリニアとはすなわち、決められたミッションが次々と課されることなく、何に挑戦するかをプレイヤー自ら選択できるスタイルだ。「ビーチに寝そべったり魚を釣ったりフルーツを集めたり、プレーヤーはやりたいことを何でもできる」という柔軟なシステムのなかで、村を発展させるために資源を少しずつ集めたりと、気づかないうちに自分で次の目標を立てるようさりげない誘導が働く。

 VOX誌(3月31日)は、「その競争の少なさ、愛らしさ、常に流れる友情の感覚。これらが私やその他数百万ものファンたちをシリーズに夢中にさせてきた」と述べている。とくに最新タイトルについては、「プレイするとまるで、史上最高に気持ちいいマットレスの上でくつろいでいて、当面誰にも起こされないでいいかのような感覚だ」「(抗ストレス物質である)セロトニンがじわりと分泌される現象のデジタル版である」「なによりこのゲームには、純粋な幸福感がある」と述べている。のどかでなおかつ熱中できるゲームプレイに心酔した模様だ。

 孤独を感じがちな隔離生活だが、スローライフとオンラインで交わす友情が、人々にとって一つの心の支えになっているようだ。

Text by 青葉やまと