まるで新型肺炎の予言…9年前の映画『コンテイジョン』が話題に

スティーブン・ソダーバーグ監督|Denis Makarenko / Shutterstock.com

◆ウイルスよりも怖い 人々の心理に影響
 フォーチュン誌によれば、この作品の架空のウイルスを作るにあたり、脚本家のスコット・Z・バーンズはリサーチに力を入れたという。専門家の助言を受け、できる限り科学的に正確なパンデミック・スリラーを作ろうと心掛けた。科学者たちに取材をするなかで、社会がこのようなウイルスに対しどんな反応を示すかについてのアイデアが生まれたという。そして、架空のMEV-1パンデミックと、それがもたらす恐怖の文化という、二つのまったく別々のウイルスの広がりを脚本にしたということだ。

『コンテイジョン』が描くのは、架空のウイルスによって破壊される世界だけではなく、それにともなうさまざまな害悪だとVoxは解説する。無秩序、社会崩壊、治療法発見の難しさ、ルールを守らない個人、公衆衛生より身内の保護を優先する人々などを具体的に上げている。

 バーンズは、現在の新型コロナウイルスへの大衆の反応を見て、多くの人々が専門家の意見に反し、恐怖をベースにした決定をしていると述べる。実際にマスクの買い占めによって、本当に必要な医療従事者に行き渡らないという事態が起きている。またアメリカでは、感染者もいないのに、地域や学校などを閉鎖するための嘆願活動などが起こっている。国全体では十数人しか感染が確認されていないのに、車の相乗りサービスには苦情が続出、チャイナタウンのレストランも閑古鳥が鳴いており、外国人嫌いや人種差別も問題化している(フォーチュン)。

◆偽情報ほど広がる ネット時代に警鐘
 Voxは、偽情報の怖さも『コンテイジョン』が描くものだと述べる。フェイクニュースというウイルスをまき散らすのが登場人物の一人、アラン・クラムウィディだ。1200万人の熱心なファンを持つブロガーだが、ウイルスが遺伝子操作で作られたなどのデマや、政府と製薬会社の陰謀説を拡散する。さらに自分も感染したがある薬で完治したと述べ、それを求める人々を薬局に殺到させ、パニックを引き起こす。

 クラムウィディのデマのなかには、それが素早く拡散し、人々に恐怖やパラノイア、政府への不信感をもたらすという十分な事実が含まれているとVoxは指摘する。いつの時代もフェイクニュースは出てくるものだが、現在はとくにネットのおかげで嘘や害のある情報は、速く広く拡散するとし、人々の恐怖が噂や伝聞に混ざり合って危険な結果を生むこともあると警鐘を鳴らしている。

 コロナウイルスの感染が拡大するいま、『コンテイジョン』を見る人がいるということは良いことだとVoxは述べる。パラノイアのワクチンには成り得ないとしても、少なくとも我々とウイルスの間に多少のバリアが作れるのではないかということだ。

Text by 山川 真智子

Recommends