メキシコ 「死者の日」の祭典 圧巻の仮装パレード

AP Photo / Ginnette Riquelme

 先住民族の衣装を着たダンサーが広い道路を駆け降りると、その後からやってくるのは赤い羽根の王冠をかぶり、右手にシャレコウベを乗せた、高さ約6メートルもの「死の女神ミクテカシワトルと、我々の骨の守護する者たち」を擁したフロートの一団だ。

 さらに後方に目をやると、頭からつま先まで赤土色のメイクを施し、動物のマスクをつけた人々が、ギクシャクした固い動きで歩いてくる。彼らが表現しているのは、死者の国「ミクトラン」の9つの階層だ。

 11月2日、首都メキシコシティでは死者の日のパレードが実施され、街を斜めに貫くレフォルマ通りには多くの観衆が集まった。パレードは大通りを進み、近年になって大きな祭壇が作られた旧市街の中心部ソカロにまで続く。

                                                                                                                 

 2週間の間、街ではカラフルなメキシコの伝統彫刻「アレブリヘ」のパレードや、先日死去したばかりの国民的スター、ホセ・ホセへのオマージュなど、さまざまなイベントが開催された。また、人々は墓地を訪れ、家庭用の祭壇を飾るなどして、故人を忍んだ。そして、街をあげての大規模なイベントの集大成とも呼べるのが、この死者の日のパレードなのだ。

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「これは非常にいいことだと、感謝すべきです」と語るのは、メキシコシティ在住の弁護士で、毎年家族で祭壇を飾るマルコ・アンドニオ・カルデナス氏(58)だ。「国内そして世界でさまざまな問題が起きるなか、こうした行事はポジティブに作用しますし、この文化に生きる者としての我々を表現してくれるので、とても良いものだと思います」

 メキシコの文化省によると、寓話的なフロートやダンスチームから成る「芸術的プロジェクト」ともいえるパレードの参加者は2,500名を超え、主催者によると観客数は200万人に上るという。

 断続的な霧雨が本格的な氷雨に変わると、パレードの放送係がアステカの雨神に向けて「トラロック様、どうかお恵みを!」と叫ぶ。ほとんどの観客が、傘とプラスチック製のポンチョを広げて身をかがめた。

 道端には造花の花束や「ルチャリブレ」のマスクなどを販売する売店が並び、多くの人が顔にペイントを施してもらうなど、にぎわいを見せた。大通りのプランターは、死者の日にゆかりのあるオレンジ色のマリーゴールドでいっぱいだ。

 群衆の中には観光客も多い。獣医クリニックに勤めるスカーレット・フォックス氏(33)と広告代理店勤務のビデオプロデューサー、エリック・ブレイ氏(39)もまた、この祭りを見物するためにアトランタからやってきた。滞在日程は約10日間。

 この夫婦は、死者の日の祝典はアメリカでも人気が高まっており、特に2017年にディズニー映画『リメンバー・ミー』がヒットしてからは、この伝統行事が広く知られるところになったと話す。フォックス氏はこの数週間、同僚も交えて「死者の日」をテーマにしたハロウィンパーティの準備を進め、完璧な「バラと白の頭蓋骨のフェイスペイント」の練習を重ねてきた。祭りには、そのメイクで参加したという。ブレイ氏によると、デザインのインスピレーションはインスタグラムで探したそうだ。

「これほど素晴らしいパレードは、初めて見ました」とフォックス氏は言う。「思い出すだけで胸が躍ります。皆さんのコスチュームも、ディテールにまでこだわっていて素晴らしかったです!」

「実は、私はメキシコ人とのハーフなのです。でも、メキシコ側の親戚とは付き合いがありません。ですから、メキシコの文化について何も知らずに育ったのですが、好奇心は強く抱いていました。ずっとここに来たかったし、知りたいと願っていたのです」とフォックス氏は語る。

 前週にもパレードは行われたが、その際モチーフとなったのは2015年公開のジェームズ・ボンド映画『007 スペクター』で、小道具なども映画から拝借していた。それに対し、2日のパレードは地元のグループがフロート制作やオーソドックスな演出を手掛けるなど、より地域伝統色の濃いイベントとなった。

AP Photo / Ginnette Riquelme


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 ダンサーが脚につけたラトルを振り鳴らせば、白いスカートとラベンダーのコートをまとった女性たちは通りを駆け巡り、顔のペイントは雨で流れ落ちた。ソチミルコ南部地区の運河を航行する伝統船「トラジネラ」のレプリカを冠したフロートからは、ガイコツ風メイクの6人が手を振った。LGBTQコミュニティから参加したグループ、「エキゾチックなカトリーナ」は、レインボー色の旗を振って多様性と非排他性を祝福した。

 メキシコシティでセルフサービス店のスーパーバイザーを務めるアレハンドラ・ロメロ氏(42)は、15歳の娘と一緒に偶然パレードに出くわし、しばらくここに留まることにしたと話す。彼女は、黒いマリアッチの衣装に身を包んだ50 名ものドラマーが、クライマックスに向けて躍動感あるリズムを打ち鳴らしていたシーンが、最も感動したと話した。

 ロメロ氏は、「死者の日というのは、愛する者を亡くした人たちに、絶えず故人を思い出させてくれる日なのです」と語る。

By PETER ORSI Associated Press
Translated by isshi via Conyac

Text by AP