是枝裕和監督『真実』に集まる世界の期待 ベネチア映画際OP作品

Arthur Mola / AP Photo

 昨年、日本映画として21年ぶりとなるカンヌ国際映画祭最高賞パルムドールを獲得し、アカデミー外国語映画賞ノミネートを果たした『万引き家族』の是枝裕和監督の最新作『真実(英題:The Truth)』が、今月行われる第76回ベネチア国際映画祭にて世界初上映される。世界三大映画祭の一つに数えられる本映画祭にて日本人監督が手がける作品としては初のオープニング作品に抜擢されている本作には、国内のみならず世界からも大きな期待が集まっている。

◆自身のテーマを貫いた是枝最新作
 フランス映画界の至宝と呼ばれるカトリーヌ・ドヌーヴ、世界三大映画祭の女優賞を制覇しているジュリエット・ビノシュ、オスカーノミネート経験のあるイーサン・ホークなど、世界的に評価されている海外キャスト陣を起用し全編フランスで撮影されたこの『真実』は、国内で映画製作を続けてきた是枝監督にとって新たな試みとなる作品だ。

                                                                                                                 

 しかし、同監督が「発表された通りキャストは実に華やかですが、物語の七割は家の中で展開していく、小さな小さな家族のお話です。 その小さな宇宙の中にできる限りの後悔や嘘や見栄や寂しさや、和解や喜びを詰め込んでみました」(『cineuropa』)と語っているように、その内容はこれまでの是枝作品に共通して見られるような「小さな共同体の中で繰り広げられる人間ドラマ」に焦点を当てたものとなっているという。

 現在アナウンスされている本作のあらすじは次のとおりである。国民から愛されるフランスの大女優ファビエンヌ(ドヌーヴ)の自叙伝『真実』出版祝いの席に集った彼女の娘で脚本家のリュミール(ビノシュ)とその夫で俳優のハンク(ホーク)。しかし、この本に綴られた内容が明らかにしたとある「真実」は家族の間に愛憎渦巻く混乱をもたらす――。

 一家の再会が家族の真実を暴き対立と和解を引き起こす、といった本作の内容は、2008年公開の是枝監督作品『歩いても歩いても』で長男の15周忌に集まった次男一家や両親の間に露となった「家族」という強い結びつきならではの複雑な人間ドラマに見られるものと共通している。しかし、淡々とした描写ながらサスペンスフルな緊張感を捉えた後者が日本の一般的な家族像を描いたのに対し、海外キャストを起用しフランスで撮影された本作の描く芸術家一族の家族観がどのようなものなのかが注目すべきポイントの一つと言えるだろう。

Text by 菅原史稀