『トップガン』新作、日台の国旗を削除? 「中国に配慮」と話題に

Chris Pizzello / Invision / AP

◆ネットで諸説飛び交う 削除の意図は?
 ネットユーザーの間では、だれが排除したのかをめぐりさまざまな憶測が飛び交っている。フォーブス誌は、テンセントの投資を認可した中国共産党が介入したのではという意見を紹介している。CNNは、「米軍を讃える映画が、中国の感受性に屈している」「国旗入れ替えは中国のソフトパワーを使った威圧だ」などというツイッター上での意見も紹介している。

 一方、もともと「トップガン」に出てくるさまざまなパッチはジョークとしてこれまで受け止められており、ここに意図を持たせる意味はないという意見もあった(フォーブス誌)。また、別のユーザーは、もともとジャケットに貼ってあったものは、主人公の父親のベトナム時代のものだと指摘。新作のパッチには「インド洋クルーズ」と書かれており、これは前作で空中戦が行われた場所であることから、続編のパッチは、主人公自身の栄光を記念したもので、地政学的なこびへつらいとは関係ないという考えを示している(ハリウッド・レポーター)。

◆中国映画の危機 ハリウッドに恩恵?
 ハリウッドにとって中国は巨大な市場だが、外国映画上映枠が限られており、参入は容易ではない。ブルームバーグのコラムニスト、アダム・ミンター氏によれば、中国政府は映画産業の育成に積極的で、2005年から2019年までに映画興行収入は30倍以上になった。娯楽を求めるミドルクラスの増加によるところが大きいが、作品の質も上がり、スケールアップしているという。

 ところが、2017年には興行収入の伸び率が鈍化。2019年前半では、興行収入は2.8%落ち込み、2011年以来初の事態となった。チケットの売り上げ数も10.5%落ち込んでいる。スターの税逃れスキャンダルや、ビデオストリーミングの普及が影響したと見られているが、上海の新聞は、「旧正月後は、国産映画でいい作品がなかった」と述べている。

 その理由と思われるのが、政府による検閲の強化だ。2018年に映画の監督部署が共産党宣伝部となって以来、検閲者を喜ばせる内容の映画作りが求められているという。その影響で、いくつかの大作が「技術的理由」という事実上の検閲により、映画祭出品を取りやめている。

 中国の映画会社は、ハリウッドのようなコンテンツでも党の意向に沿った作品を作る方針だが、こうした映画は見る側には面白みがなく、チケットが売れないことは規制する側もわかっているとミンター氏は述べる。中国では7月、8月の稼ぎ時は、国産映画のみの上映が普通だが、この夏はセールス増加のため、海外勢にも門が開かれるという。

 ハリウッド側とすれば、中国映画の勢いが弱まったこのチャンスを逃す理由はない。よって今回のトップガン続編では、自己検閲で中国に忖度した可能性もありそうだ。現時点でフォーブス誌、CNNからのコメントの求めに対し、同作品の映画会社、パラマウント・ピクチャーズ、テンセント・ピクチャーズともに応じておらず、真相は謎のままだ。作品の公開は、2020年夏の予定となっている。

Text by 山川 真智子