マンガは大英博物館にふさわしくない? Manga展に賛否 世界に浸透する日本文化

Paul Hudson / flickr

◆日本から飛び出しあらゆる領域に浸透し始めたマンガ
 一方で英紙タイムズは、ルネサンス期にシスティーナ礼拝堂天井画を描いたミケランジェロとマンガには共通点があると書いた。言葉ではなく絵で、見る者へ直接ストーリーを訴えかけてくるからだという。また、大英博物館でマンガ展が開かれている理由は、マンガがもはや日本だけのものではなく世界に広がり、映画、広告、おもちゃ、テレビ、ビデオゲーム、ラップ音楽、車のデザインにいたるまで、あらゆる領域に浸透し始めたからだと説明。この展示会は最初から最後まで、まるで放水銃で打たれているかのような衝撃だった、と絶賛した。

 あれだけ辛口のレビューを掲載したガーディアンだが、記者が違えば受け取り方もかなり異なるようだ。5月23日には、アメリカン・コミックを描くこともあるという作家のデビッド・バーネット氏の意見記事を掲載した。バーネット氏は記事のなかで、大英博物館でマンガ展を開くことは適切なのか、との疑問について触れ、ここ100年の近代・現代文化にマンガが大きく貢献したと大英博物館が認識したということだと指摘。たまたまその文化がいまも続いているというだけのことで、大英博物館が文化のための公共施設であるなら、マンガがここに展示されるのは、エルギン・マーブルが展示されるのと同じくらい適切である、と書いた。 

◆日本を知るきっかけに
 こうして賛否両論の大英博物館マンガ展だが、ここで紹介した記事ではどの記者も共通して、マンガという文化自体には一定の評価を記している。「Manga」「Anime」はいまや英英辞典にも載るほどに世界の文化となり、「クール」なものとして受け取られている。

 たとえば香港の若き社会活動家で「民主の女神」とも呼ばれる周庭(アグネス・チョウ)さん(22)はアニメ好きで知られ、日本語を独学で身につけたほどだ。フィギュアスケートのエフゲニア・メドベージェワ選手(19)も、アニメ好きかつ日本びいきで知られている。この世代の人たちにとってアニメは、日本への憧れを抱くきっかけとなっているようだ。筆者は最近、アグネスさんやメドベージェワ選手と同じ世代である10代後半や20代前半の欧米人と話す機会があるが、「子供の頃からアニメが大好きだったから、日本にずっと憧れていた」と口にする人も少なくない。

 日本はいま、GDPが世界第3位に後退しており、内閣府も「世界経済における日本のプレゼンスは弱まりつつある」と悲観的な見通しを述べている。かつては日本企業が上位を多く占めていた「世界時価総額ランキング」も、いまでは上位50社に入っている日本企業は35位のトヨタ1社のみとなった。

 経済的な豊かさでは後退を始めてしまった日本だが、今後はマンガなどの文化資産が、世界で日本のプレゼンスを維持する鍵なのかもしれない。大英博物館のマンガ展とそれを伝える英国の報道は、そんな希望を与えてくれる。

Text by 松丸 さとみ