映画『バンブルビー』レビュー:『トランスフォーマー』シリーズに救世主現る!

Paramount Pictures via AP

 映画『トランスフォーマー』の世界は最近、穴だらけでつまらない。中二病の男どもが内輪ウケで作った超大作――悪い大ヒット映画作りの見本になっている。どうすれば救うことができる? 簡単だ。才能ある女性たちにバトンタッチすればいい。

 シリーズ6作目となる『バンブルビー』は、クリスティーナ・ハドソンの思わず引き込まれてしまう脚本によるスピンオフ作品だ。主演には、歌手としても活躍する実力派若手女優ヘイリー・スタインフェルドを迎えた。やり尽されて膨れ上がったシリーズを一新する、一人の少女と愛すべき車型ロボット(オートボット)のチャーミングな物語だ。ガチのファンは生ぬるいと文句をつけるかもしれないが、『トランスフォーマー』シリーズを救うために現れた救世主として申し分ないことが、この映画を観ればわかるだろう。今回、バンブルビーはオプティマス・プライムを救うことができるだろうか。

 時は1987年、サンフランシスコ郊外。地球を守り、シリーズの基盤を作り、第1作の冒頭でシャイア・ラブーフに出会うために派遣された忠実なオートボットB-127は、悪の組織ディセプティコンが放った2体の追手との戦いで深手を負う。声と記憶を失った彼は、おんぼろのフォルクスワーゲンビートルに変形し、廃車置き場で救援を待つ。ここまでは『トランスフォーマー』の世界とほとんど変わらない。

                                                                                                                 

 車の修理が趣味で、モーターヘッドのTシャツを着てザ・スミスを聴き、家でも学校でも浮いているゴス系のチャーリー・ワトソン(スタインフェルド)が彼を見つける。父親の死を引きずり、自分の声は誰にも届かないと思っている彼女は、18歳の誕生日に秘密のオプションが満載の廃車のフォルクスワーゲンを手に入れる。

 その車は実はエイリアンだったと彼女は知るが、口ほどに物を言う目をした彼に親近感を抱き、バンブルビーと呼ぶことにする。彼の声も届かないが、カーラジオから聞こえる言葉の断片を繋ぎ合わせて意思疎通を図るようになる。悪い奴らがやってきてあなたを連れていこうとするだろうけど、私が守ってあげると彼女は言い、「人は、自分が理解できないものに対してひどいことができるのよ」と警告する。

 かくして、2018年版『E.T.』のような物語が始まり、チャーリーとバンブルビーは、ディセプティコンの新たな追手、機械仕掛けのジョン・シナ率いる全アメリカ陸軍、チャーリーを悩ませる母親と継父を出し抜く。もし本作から子供向けの、懐かしい80年代のスピルバーグ映画のような印象を受けるとしたら、それはおそらく、スティーヴン・スピルバーグが製作総指揮に名を連ねているからだろう。シリーズの監督を務めてきたマイケル・ベイは、今回監督を降りて製作に回っている。

 累計興行収入43億ドルを超える『トランスフォーマー』シリーズで、女性として初めてオリジナル脚本を手掛けたハドソンは、チャーリーの父親のくだりではあわや感傷的になりかけるものの、派手なアクションと人間の複雑な感情、そしてもちろん、甘いタルトをも織り交ぜる優れた能力を証明する。「私もあなたを失いたくない」と少女は黄色いロボットに言う。スタインフェルドは、10代が抱える疎外感を見事に表現して観客の共感をさらい、生意気な態度もどこかかわいらしくて憎めない。さらに、彼女は本作の主題歌を歌っている。まさに変幻自在のトランスフォーマーだ。

Paramount Pictures via AP


TWill McCoy / Paramount Pictures via AP

 脚本のハドソンと監督のトラヴィス・ナイト(『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』)は、本作の80年代後半の設定を最大限に活かして、目から耳から観客を喜ばせる。チャーリーが愛を込めてバンブルビーを修理するシーンで流れるのは、スティーヴ・ウィンウッドの『ハイヤー・ラヴ』。カーチェイスのシーンでは、サミー・ヘイガーの『非情のハイウェイ55号』が鳴り響く。ほかにも、ウォークマン、ポップタルト、『アルフ』、『特捜刑事マイアミ・バイス』などなど、80年代を象徴するモチーフが多数登場する。そして、巧妙かつ控えめなタッチで、インターネットの黎明が描かれる。

 ボン・ジョヴィ、デュラン・デュラン、アーハ、ティアーズ・フォー・フィアーズ、ワン・チャンのヒット曲が全編を彩る。チャーリーの選曲を愉快に却下するバンブルビーは、すぐれた音楽批評家でもあるようだ。古参ファンには嬉しい、1986年のアニメーション映画『トランスフォーマー ザ・ムービー』の挿入歌『ザ・タッチ』も聴ける。グッジョブ! 製作陣はシリーズの世界にも忠実で、バンブルビーは最後に、マイケル・ベイ版で使われているシボレー・カマロにトランスフォームする。

 これまでオーバーなバトルを山ほど観てきたから、人の車に卵を投げつけるような、バンブルビーのささやかな破壊行為は観ていて楽しい。ぼんやりとした不安を抱えた変わり者の思春期のティーンエイジャーのように描かれている彼が、一人で家に残されるシーンは見ものだ。若い人たちには、1985年を代表する映画『ブレックファスト・クラブ』を観ることをお勧めする。シナとのラストシーンでさりげなく使われるように、予想以上に素晴らしいオマージュがちらほら登場する。

 ガチのファンは、ロボット対ロボットのバトルが足りなくて不満かもしれないし、少女とロボットの友達以上恋人未満の関係に食指が動かないかもしれない。しかし、古くさくて堅苦しいスペクタクルにこだわった『トランスフォーマー』シリーズに嫌気が差して足が遠のいていた観客の心を、この映画が掴むことを願おう。私たちが求めていた、もっとささやかで、穏やかで、人のぬくもりや優しさが感じられる新作が、『バンブルビー』だ。

 パラマウント映画配給『バンブルビー』は、PG-13指定。上映時間1時間59分。3月22日(金)より公開。

By MARK KENNEDY, AP film writer
Translated by Naoko Nozawa

Text by AP