“世界初の小説”として欧米で人気の『源氏物語』 解釈もアップデート
今月から、米メトロポリタン美術館で「源氏物語」展が開催中だ(6月16日まで)。展示品のなかには、日本国外へ初めて貸し出される国宝・重要文化財もあり、話題を集めている。『源氏物語』はとりわけ欧米で評価が高く、昨年は著名な研究者による解説書も出版され、多彩な見方が広まっているようだ。
◆偉大な日本文学者を生んだ優美な物語
戦後、英語圏で『源氏物語』の評価を高めるのに大役を果たしたひとりが、2月に死去した日本文学者のドナルド・キーン氏だ。世界が軍事色に染まっていた1940(昭和15)年、地元ニューヨークの書店で買った『源氏物語』が、日本文学への入り口だった。買った理由は単に安かったからだが、読むとすぐに典雅な世界観に魅了されたという。ニューヨーク・タイムズ紙は、この劇的な出会いを「“激しい平和主義者”と自称したキーン博士にとって、嫌悪する現実からの逃避場所」になったと伝えている。
以降、キーン氏は日本語学習や『源氏物語』をはじめとする文学の研究に没頭し、日米両国で研究者として活躍。日本文学を介した両国のかけはしとなった。氏の教え子による『源氏物語』の新訳も出版され、日本の古典は「世界初の小説」として認知されていった。
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