映画レビュー『メリー・ポピンズ リターンズ』 エミリー・ブラントの魔法が幸せ運ぶ

Jay Maidment /Disney via AP

 オリジナルの『メリー・ポピンズ』が公開されてから半世紀。その間、私たちは砂糖について多くを学んだが、正直いいことは何一つなかった。砂糖は肥満や心臓病の原因となり、健康にあらゆる悪影響を及ぼすと医者は口々に言う。

 だが実際は、ちょっぴりの、いや、ひとさじの砂糖が本当に必要なときだってあるのだ。たとえ健康によくなくたって、幸せのために。実にうれしいことに、54年ぶりとなる続編『メリー・ポピンズ リターンズ』で、ジュリー・アンドリュースの後継者としてあらゆる点でほぼ完璧なエミリー・ブラントが、そのひとさじの幸せを運んでくれる。

「Spit spot!(タッタカタ!)」に続き、「Pish Posh!」「Jigetty Jog!」など、おなじみのメリー・ポピンズ節がブラントの口からさらっと出てくる。鏡に映る自分の姿を見て「あらゆる点でほぼ完璧!」と言いつつ傲慢さを感じさせないのは容易ではないが、ブラントのメリー・ポピンズはやさしいあたたかさと魅力にあふれている。

                                                                                                                 

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 もちろん、エミリーも共演者やアニメーションと一緒に歌い踊る。おまけに、彼女は愉快だ(子どもに体重を聞かれたときの彼女の憤りは必見)。ところが、一転メリー・ポピンズの鋼のような神経や危機を察知する感性を表現する。エミリーは、メリー・ポピンズとしてやるべきことを完璧に把握している。彼女以外に、この役を演じられる女優は考えられない。

 さらに嬉しいことに、とことん楽しいこの映画で最高のパフォーマンスを見せるのはエミリーだけではない。ロブ・マーシャル監督と一流のアーティスト陣が、半世紀前の名作を称えつつ新しい表現を模索するために尽力した。

 オープニングクレジットの油彩からエンディングの風船いっぱいのスプリングフェアに至るまで、ビジュアルが楽しい。そして、サンディ・パウエルのデザインによる衣装が最高だ。中でも、メリー・ポピンズが着ているストライプと水玉模様の組み合わせが印象的な赤と青で統一した衣装は、頭にちょこんと載った麦わら帽子からバレリーナのようにきれいに外を向いた足を包む靴にいたるまで、素晴らしい。そして、実写とアニメーションを合成した目玉シーンでメリー・ポピンズとジャックとバンクス家の子どもたちが着ている砂糖菓子のようにカラフルな衣装は、愉快な効果を生み出すため、文字通りハンドペインティングが施されている。

 主演のエミリーを支えるのは、かつて煙突掃除夫のバート(ディック・ヴァン・ダイク)のもとで働いていた心やさしい街灯点灯夫のジャックを演じるリン=マニュエル・ミランダ、成長したバンクス家の子どもたちを演じるベン・ウィショーとエミリー・モーティマー、バンクス家の父親マイケルが勤める銀行の頭取を演じるコリン・ファース、おまけに、メリー・ポピンズのいとこで、その発音から東欧出身とおぼしき赤毛のトプシーを演じるメリル・ストリープという、魅力的な俳優陣だ。

 さらにスペシャルゲストが。現在93歳にしてなお、かくしゃくとしたディック・ヴァン・ダイクが本作にカメオ出演している。オリジナル作でバート役を演じた彼の半世紀ぶりの登場シーンは、踊り出す前からすでに、間違いなく観るものの心を揺さぶるだろう。

 物語の舞台は大恐慌時代のロンドン。妻を亡くしたマイケルは、3人の幼子とともに桜通り17番地で暮らしているが、生活は苦しい。労働組合を束ねる姉のジェーンは、街の反対側にあるアパートに住んでいる。

 借金の返済が滞り、このままでは銀行に家を取られてしまう。5日後の返済期限までに父が遺した株券を探し出して借金を返し、家を守らなければ。必死になって株券を探している最中、思い出の凧が出てくるが、マイケルはそれを捨ててしまう。

 幸いその日は風が強く、凧と一緒に誰かが飛んでくる。そう、メリー・ポピンズが、底なしのカバンと傘を手に空から現れるのだ(ここでもう泣いていると、困ったことになる。泣くなと言っても無理かもしれないが)。マイケルとジェーンは驚き、「会えてよかった」と声を上げる。「ええ。そうよね」とメリー・ポピンズは返す。

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 そんなわけで、メリー・ポピンズは再び階段の手すりを滑り上がっていく。手始めに、子どもたちを風呂に入れる。バスタブの底から探検に出発し、イルカや海の生き物が飛び跳ねるカラフルな海を泳ぐ。

 このシーンでメリー・ポピンズが歌う『想像できる?(Can You Imagine That?)』をはじめ、母を亡くした子どもたちの心にやさしく寄り添うような『幸せのありか(The Place Where Lost Things Go)』、トプシーが熱唱する『ひっくりカメ(Turning Turtle)』、ブラスをフィーチャーした『本は表紙じゃわからない(A Cover is Not the Book)』など、キャッチーな曲の数々をマーク・シャイマンとスコット・ウィットマンが本作のために書き下ろした。街灯点灯夫たちのダンスナンバー『小さな火を灯せ(Trip a Little Light Fantastic)』がバート率いる煙突掃除夫たちが歌い踊る『踊ろう、調子よく(Step in Time)』へのオマージュであるように、どの曲も前作の魂を受け継いでいる。

 物語の主役ではないものの、街灯点灯夫のジャックを演じるリン=マニュエル・ミランダの存在は、暗い大恐慌時代のロンドンにあたたかい太陽のような空気をもたらし、周囲を包み込む。彼のコックニー(ロンドン訛り)は先代より達者で、前作のディック・ヴァン・ダイクと同じくアニメーションのペンギンと共演したシーンで見事なラップを披露している。エミリー・モーティマー、そして何といってもベン・ウィショーの二人は、ともすればお飾りになる役に息吹を与えた。

 これ以上の説明は不要だろう。それに、ジャックの言葉を借りると、「メリー・ポピンズは説明しない」のだ。もう一度彼女に会えるだろうか。それは誰にもわからない。だが、愛すべきエミリーの姿で帰ってきた、メリー・ポピンズに会えてよかった。

 彼女はきっと、「ええ。そうよね」と言うだろう。

 ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ配給『メリー・ポピンズ リターンズ』:PG指定。上映時間は2時間10分。日本では2019年2月1日(金)公開。

By JOCELYN NOVECK, AP National Writer
Translated by Naoko Nozawa

Text by AP