映画レビュー『ミスター・ガラス』 19年ぶりのスーパーヴィランの姿に驚き

Jessica Kourkounis / Universal Pictures via AP

 サミュエル・L・ジャクソン演じるイライジャ・プライス、またの名をミスター・ガラスは、驚愕の結末が待ち受けるアメコミのパロディ『アンブレイカブル』(M・ナイト・シャマラン監督)で最も魅力的なキャラクターだった。天才的な頭脳を持つスーパーヒーローマニアで、骨形成不全症を抱え苦悩する悪の黒幕という設定のミスター・ガラスは、観客を虜にするカリスマ的スーパーヴィラン(悪役)だ。

 ミスター・ガラスが我々の前に再び現れるまでに19年という長い時間がかかった。しかし、シャマラン監督は、長年温めてきたこの映画の題名をその名から取ってもなお、ミスター・ガラスを観客から遠ざけることにした。そう、彼はミスター・ガラスを、映画の半分以上にも感じられる間、まばたきしかせずカメラをじっと見つめている過度の鎮静状態にある植物人間にしたのだ。

 これは、観客を途中で突き放したいがために、あの手この手で見る者を苛立たせ失望させようとする手の内の一つにすぎない。これはきっと、起承転結のはっきりしたストーリーテリング、数々の仕掛け、コミック文化の神格化、そして柔軟な観客の期待などさまざまな点を考え抜いた結果であろうが、ワクワクすることも、考えさせられることも、心に残ることも決してない、不完全なアイデアの詰め合わせのように思える。

                                                                                                                 

『ミスター・ガラス』は、『アンブレイカブル』と『スプリット』を観ていない観客にまるで配慮していない。軽い説明を挟むだけで物語は進行する。ブルース・ウィリス演じるデヴィッド・ダンが悪ガキどもを叱っているシーンが映し出される。そして、「純粋でないから、おしおきしないといけない」という理由で高校生チアリーダー4人を誘拐した多重人格者のケヴィン(ジェームズ・マカヴォイ)のシーンに飛ぶ。

 成長した息子のジョセフ(『アンブレイカブル』で同役を演じたスペンサー・トリート・クラークが好演)と一緒に仕事をしているデヴィッドは、失踪したチアリーダーの行方を追っていた。ジョセフはデヴィッドに警告する。よかれと思ってしたことで犯罪者と被害者が負傷し訴訟を起こされる事態を招き、デヴィッドもまた社会の迷惑というレッテルを貼られていたのだ。え、それって『Mr.インクレディブル』みたいなストーリーじゃない、と思ったあなた。驚くのはまだ早い。狙っているのかいないのか、続編『インクレディブル・ファミリー』のテーマの焼き直しも登場する。

 24もの人格を持つ多重人格者のケヴィン。9歳の少年や老齢のイギリス人女性、そして「ビースト」と呼ばれる恐ろしい人食い鬼など、ケヴィンの全人格の総称は「群れ」と呼ばれる。デヴィッドと「群れ」の二人は、精神分析医のエリー・ステイプル(サラ・ポールソン)にミスター・ガラスが収容されている精神病院へ連行される。

Jessica Kourkounis / Universal Pictures via AP


Jessica Kourkounis / Universal Pictures via AP

 ステイプル医師は、誇大妄想にとりつかれ、自分をスーパーヒーローだと思っている人々の治療を専門としていると慇懃無礼に説明し、彼らの能力や弱点はすべて幻想で、科学と幼少期のトラウマが原因と主張する。パステルピンクの部屋で行われるこの小規模なグループセラピーは見どころの一つだ。この映画が嬉々としてスーパーヒーロー誕生物語の神話を破壊し、主役3人を疑念の渦中に向かわせているかのように思わせる。

 しかし、このシーンや、観客に一杯食わせようというシャマラン監督の意図を感じるほかの展開に、執着してはいけない。シャマラン監督は方向転換したり引き返したりして、一つのストーリーに気を取られている観客をあざ笑う。『スプリット』で「群れ」からただ一人生き延びたケイシー(アニャ・テイラー=ジョイ)は、被害者が犯人に好意を抱くストックホルム症候群にかかったかのごとく、ケヴィンに同情を寄せているかのような様子で再登場する。

 ミスター・ガラスはまさに植物状態で登場し、やがて映画を本格的に動かす。ジャクソンの本領発揮だ。マカヴォイは今回もすべての人格を熱演しており、豹変する彼は見物だが、おそらく全編を通して見せるには及ばない。ウィリスはほとんど見せ場がない。鳴り物入りで実現したこの3人の共演を待ちわびた観客の期待を、『ミスター・ガラス』は大きく裏切る。

ユニバーサル映画配給の『ミスター・ガラス』はPG-13指定で、上映時間は2時間9分。2019年1月18日(金)公開。

By LINDSEY BAHR, AP Film Writer
Translated by Naoko Nozawa

Text by AP

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