バスケ期待の星・八村塁、活躍の裏に英語との格闘の日々 周りも成長ぶりを称賛
◆コミュニケーションができない 言葉の壁との戦い
八村の選手としての才能は疑うものがなかったが、1年目はほとんど試合の出場機会がなかった。英語力が足りず、コーチやチームメイトとのコミュニケーションが取れなかったからだ。ゴンザガ大学のバスケットボール部は外国人学生を積極的にリクルートすることでよく知られているが、スポーツ・イラストレイテッド誌によれば、ほとんどの留学生は初めからある程度英語ができるという。バスケットボール部の監督のマーク・フュー氏は、「ルイが深刻な言葉の壁にぶち当たった初のケースで、最初は我々が言っていることの1割しか理解できていなかった」と回想している。
見た目が普通のアフリカ系アメリカ人に見えることも災いしたとESPNはいう。周りは当然英語を理解すると思い込んで接してくるため、八村は笑顔でうなずくことでわかったふりをし、その場をしのいでいた。チームメイトとの会話は挨拶で終わるレベルで、家に招待されても、一晩で二言三言しか言えない状態だったという。この状態でコーチが使うバスケットボール用語がわかるはずもなく練習や試合にも支障が出た。恵まれた体格、選手としての技術、バスケットボールへの理解もすべてあったのに、英語がわからないことでその能力を発揮することができなかったのだ。
言葉の壁を乗り越えなければ先へ進めないと理解した八村は、1日5、6時間の英語クラスの学習に地道に取り組んだ(スポーツ・イラストレイテッド)。八村の非公式通訳を買って出た大学院生でチームのビデオ・コーディネーターでもあったケン・ナカガワ氏との会話も英語だけにし、バスケットボール、学部での授業、英語学習で休む暇もない毎日を過ごしたという。ときには使ってはいけない言葉まで覚えてしまったが、チームメイトが見ていたテレビ番組や、意味不明なまま覚えたラップソングも英語学習に役立った(ESPN)。
◆今や頼れる愛されキャラ 注目のドラフトの行方は?
努力の甲斐あって、今では流暢に英語が話せるようになり、インタビューも自然にジョークを交えつつ答えられるまでになった。八村の学習アドバイザーやナカガワ氏、コーチ陣もその成長を讃えている。もともと明るい性格のため、チームにもすっかり溶け込みリーダー格になっているということだ。チームメイトのフランス人、キリアン・ティリーは、「付き合っていくと面白いやつだとわかる」と八村を評し、「やつは音楽をかけて踊るんだ。歌はド下手だけどね。1年生の時とはずいぶん違うよ」とその変身を歓迎している(ESPN)。
英語ができずストレスを溜めた1年目はコートでも受け身なプレーが多かったが、3年目となる今年は、コーチ陣が求めていた自信あふれるプレーで、現在平均得点21.9と絶好調。チームもAP通信のランキングで1位に浮上した(11月26日付)。来年は日本人初のNBAドラフト指名を受けるのは確実とされており、今後の活躍にも期待が高まる。
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