ヨーロッパで増える「ひげ男」 おしゃれカット、植毛……豊かなひげカルチャー

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 ヨーロッパと一口に言っても、ファッションにはお国柄があらわれる。だが、ここ数年、イギリスやフランス、ドイツなどいろいろな国で、男性がひげを生やす姿がよく見られるようになった。筆者が住むスイスでも、銀行、駅、薬局、レストランなど、どこに行ってもひげ姿で働く男性に出会う。ニュースキャスターも政治討論番組のキャスターもひげを生やしている。この流行のきっかけは、ひげ姿になったハリウッドスターたちだと言われている。男らしくて格好いいという男性性を強調したひげは、市民権を得てきたと言っていいだろう。

◆「鼻下から顎までしっかり生やす」も人気……イギリス
 オンラインアンケートによる市場調査を行っているYouGov(本社ロンドン)のイギリスでの調査詳細な統計)によれば、2011年8月時点から2016年11月時点の約5年越しの「ひげスタイル比較」で、ひげを生やす男性が増えたという結果が出た。

                                                                                                                 

 2016年は819人の男性が回答。これをイギリスの男性全体として計算すると下の表になる。4割を超える男性が何らかのひげを生やしていて、イラストの左から2番目の「鼻下から顎までしっかり生やす」ひげの人気が上昇している。年齢別で見ると18~39歳でひげ有の人が大幅に増えて、2016年の時点では、6人に1人が何らかのひげを生やしていたそうだ。

(筆者作成)

 ひげを生やす三大理由は、ひげを剃るのが面倒くさいから(約3割)、ひげを前から生やしていたから(約3割)、より魅力的になりたいから(約1割)で、少数派の理由は、老けて見られたいから、何かの主張としてひげを生やしたいから、宗教上の理由などが上げられた。

 この調査では、もう1つ面白いデータがある。ひげを女性たちがどう感じているかという点だ。イギリスの女性全体としての結果は、表a)のようになった。2011年はひげなしが好きだと答えた割合が6割を超えていたが、2016年にはそれがぐんと減って、ひげ有が好き、またはどちらでもいいという割合が随分増えていることがわかる。そして、同記事では、表b)のように、とくに18~39歳でひげが好きという傾向が強くなったことにもふれている。

 ひげ人気が定着してきた中で、おそらくほかの国でも、ひげに対する女性側の抵抗感は少なくなっているのではないだろうか。

(詳細な統計より、筆者作成)

◆理髪店でのメニューに「ひげカット」……フランス
 ひげを生やすと、やはり、お手入れが必要になる。自分でお手入れ派もいるし、プロにお任せ派もいる。プロに頼むなら理髪店やひげサロンに行く。店では、ひげカラーリングもしてもらえる。「ひげカット」は、この店がおすすめ!という人気店・信頼できる店の紹介もネットに出ている。フランスでのお手入れ事情を見てみよう。

 私たちがプロに髪を切ってもらうとき、伸び過ぎてスタイルが崩れたから行く場合がほとんどだ。同じように、ひげのカットも、そういった状態で出かけることが望ましいそうだ。美容専門誌『Coiffur de Paris』のサイトに、プロとしてひげをうまくカットする秘訣が載っているが、パリのサロンのマネージャーBoulomさんは、顧客に予約日の10~15日前からひげを伸ばしたままでいるようにお願いするという。別のサロンのマネージャーFortさんは、ひげがあまりない人に魔法が使えるわけではないので、ひげがしっかりと生えているかどうかも自分で判断して予約してほしいと言う。

 メディアに取り上げられることの多い理髪店La Barbière de Paris(パリに4店舗ある)では、スタンダードコースとプレミアムコースの2つを用意している。支店によって値段は異なるが、スタンダードコースだと、顎ひげカットは27ユーロ(約3,500円)、口ひげカットは20ユーロ(約2,600円)、顎ひげの化粧またはブラッシング20ユーロなど。カラーリングは顎ひげまたはやぎひげ35ユーロ(約4,500円)、口ひげまたは眉毛20ユーロ。口ひげ脱毛は12ユーロ(約1,600円)。プレミアムコースだと顎ひげカットが60ユーロ(約7,800円)になり、カラーリングも脱毛もスタンダートより高くなる。

 では、自分でひげのお手入れをする場合は、どんなことに気をつければいいのだろうか。自分の経験をシェアしようと、QueBellissimoというサイトを立ち上げたSoaresさんの投稿を参考にしてみよう。それによれば、最低6週間伸ばしてから始めることが基本だという。必要な道具は散髪用はさみ、シェーバー、コーム、かみそり、鏡2つの5つ。注意することは、数ミリメートルずつカットしていくこと。多くの男性が、一度にたくさん切り過ぎて失敗するそうだ。順序としては、①顔の脇(耳の前側)、②首と顎のライン、③頬、④鼻下(口ひげ)、⑤顎ひげの長さと厚みの調整のように進むとうまくいくという。

 また、ひげ用のブラシ、シャンプー、オイルなど、専用グッズもいろいろ売られている。

◆ひげの植毛も登場
 このように、ひげについての情報は溢れているので、ひげを生やしたい人は簡単に試すことができる。しかし、ひげが不揃いになってしまう人、しっかりと生えない人もいる。そんな人たちのために、ビタミン剤まで販売されている。

 また、驚いたことに「ひげの植毛」ができる男性専用美容外科もある。スイス・チューリヒのあるクリニックでは、全然ひげがない人でも、自分の後頭部の髪を植毛して立派なひげを生やすことができる。お値段は、通常パック(2千本まで)が約72万円、メガパック(3千本まで)が約94万円、スモールパック(1千本まで)が約49万円からとなっている。はたして、どれくらいの男性がひげの植毛をしているのかわからないが、もしかすると、ひげに関して悩む人は案外多いのかもしれない。とにかく、ヨーロッパのひげカルチャーは、日本人の感覚とはまったく違うと感じさせられる。

Text by Satomi Iwasawa

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