観光地ギリシャ・アテネは穴場? 訪れて見えた新旧の“美”たち(コラム)
ギリシャといえば、以前は「ハネムーン先にいいかも」というキラキラした印象だったろう。いまは、日本でも頻繁に報道された2010年と2015年の「ギリシャ危機」で、イメージダウンしているのではないか。ギリシャはEU加盟国で、ヨーロッパのほかの国々と国際通貨基金(IMF)が多額の融資をして、危機(破綻)は回避されている。
1年前のルポによれば、食糧配給に頼ったりしている人たちもいて、生活状況は悪くなっているという。しかし、経済評論家の岡田晃氏も言うように観光は好調だ(中段のオレンジ色の棒グラフ参照)。ギリシャ銀行によると、2017年(1~9月)の旅行者は約2600万人に達した。このうちビジネス目的で訪れた人は4.9%のみだった。
◆美しい、おいしい、買い物便利、親切――アテネの魅力
筆者は今年2月、初めてアテネを訪れた。筆者の住むスイスからアテネに旅行した人からも「なかなか粋な町」と聞いていた。また、European Best Destinationsという組織が実施している「ヨーロッパのベスト訪問地2018」というオンライン投票(162ヶ国、32万人以上が投票)でも、アテネは7位で、しかも、過去8回の投票で毎回10位以内に入っているという不動の人気ぶりだから、楽しめる場所なのだろうと想像していた。でも、事前にガイドブックを見ても、本当だろうかというのが本音だった。そんな気持ちは、滞在してみて吹き飛んだ。
アクロポリスほかの遺跡は格別だった。ぎっしりと遺跡があるわけではないとはいえ、大昔のヨーロッパにタイムトリップできる。アクロポリスは修復中だが、夜はライトアップされて、とても幻想的だ。
食べものは全体的に安くておいしい。洒落たカフェやレストランもたくさんある(ちなみに、ホテルの料金は軒並み高め)。買い物も高級ブランド品から手頃なものまでそろっていて、店の営業時間は長い。タクシーが安い。みな、人当たりがよくて親切だったことも印象的だった。避けた方がよい地区はあるものの、安全だと感じた。
◆アートが鍵
アテネは古いものだけでなく、モダンアートにも力を入れている。昨年は、「ドクメンタ14」という5年に1度ドイツで開催される国際現代美術展が2都市開催となって、アテネも舞台となり話題になった。それに合わせるかのように、アテネは、美術館・建築・景観のオスカー賞ともいわれるBest Emerging Culture City of the Yearを受賞した。これまで、ニューヨーク近代美術館(MOMA)やスペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館、ベニスやロサンゼルスなどが受賞してきて、アテネにとっては大きな栄誉だろう。
また、ときに「落書き」と非難されることもあるが、ストリートアートも特定の場所でたくさん見られて、街並みにアクセントを加えている。
◆新観光名所 国立図書館が新設
モダンアートといえば、2016年、アテネに新名所が誕生した。新しい国立図書館と国立オペラ座と広大な公園を配したカルチャーセンターThe Stavros Niarchos Foundation Cultural Center(通称SNFCC)だ。海の近くにあり、アテネの中心からは電車やバスで30分ほど。
800億円以上をかけたモダン建築は、地元の人たちが、レベルの高い文化的な複合施設に気軽にアクセスできるようにという目的で作られた。また、中心部だけを見て回りがちな観光客に、市内の別の場所も知ってもらおうという目的もあった。筆者も訪れてみた。休日で、本当に多くの人でにぎわっていた。本を読んだり、最上階から景色を眺めたり、公園を散歩したり、食事したり、海のほうまで歩いたりできて面白い。
国立図書館は、いま、旧国立図書館から本を移動中で4月の初めには終了する。アテネは、2018年、ユネスコのWorld Book Capitalに選ばれている。4月から1年間、本に関連して市内でいろいろな催しがあり、新しい図書館は、まさに「世界本の首都」の名を象徴することになる。
アテネがさらなる魅力を放つのか、今後の展開が楽しみだ。