自分と正反対の人に惹かれる 広く信じられている恋愛の迷信
著:Matthew D. Johnson(ニューヨーク州立大学ビンガムトン校 Chair & Professor of Psychology and Director of the Marriage and Family Studies Laboratory)
自分と正反対の人は魅力的だ、と、誰しも賛成するだろう。老いも若きも、幸せに包まれるパートナー同士も、悲しみに暮れるカップルも、独身、既婚を問わず、愛にまつわるこの古典的な言い回しには皆、賛成を表明しているらしい。人間関係に詳しい専門家たちは、この仮定に基づいて書籍を執筆した。パートナーを募集中の人たちの86パーセントが自分と正反対の気質を持つ相手を探している、と公言し、その人たちにとってはこの考え方は既に強く自分の内面に根ざしたものにさえなっている。
ところが、ことロマンスの話になると、磁石のN極とS極が引き合う、という真実がまったく当てはまらないことがあるから厄介だ。私は自著、『Great Myths of Intimate Relationships: Dating, Sex, and Marriage』で述べたが、人は、自分自身に似ている相手に魅了される傾向がある。
◆あなたが私にとても似ていることが好き
人が本当に自分と正反対の人により大きな魅力を感じるのかどうかは、多くの科学的な研究の対象となっている。研究者たちは、どんな組み合わせであればよりロマンチックなパートナー同士になれるのかを研究した。似た者どうしが良いのか、それとも、違う性格の者どうしが良いのか、さらには、正反対の性格の者どうしが良いのか? 科学者たちは、考え得る3つの可能性を仮説として唱えた。それぞれ、ホモガミー(似た者同士)仮説、ヘテロガミー(正反対の者同士)仮説、そして相補性仮説という。
ここでは、明らかにホモガミー仮説に分がある。1950年代以降、社会学者たちは240以上の調査を実施し、態度、人柄、対外的な好奇心の強さ、価値観やその他の気質の観点から、相似性が相手を惹き付けることにつながるかどうかを見極めようとしてきた。2013年には、心理学者のマシュー・モントーヤ氏とロバート・ホートン氏は、いわゆるメタ解析という手法でこれらの総合的な研究結果を分析した。両氏は、相手が似ている、ということと、相手に惹かれる、ということの間に、反論の余地のない相関性があることを見いだした。
つまり、明確で説得力のある理由があるからこそ「類は友を呼ぶ」ようになることが判明した。人間にとって、似ている、ということが人を惹きつける作用はとても強く、洋の東西を問わず、文化を越えて見られる傾向である。
類似性が魅力と相関関係にあるため、婚姻関係、または結婚を前提とした関係にある個人同士が様々な点で似ている、というのも理にかなっている。これには同類交配という用語がしばしば使われるが、この用語は本来、学歴や職種、容貌などが似ている者どうしがカップルとなる傾向にある様態を表わすために多用されるものだ。
しかしながら、これは、自分と対極にある相手には惹かれない、ということを必ずしも意味するものではない。ホモガミー仮説と相補性仮説のいずれもが真で有り得る、ということだ。それでは、正反対の者同士が往々にして惹かれ合う、ということに科学的な論拠はあるのだろうか?
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