年配女性はファッションに何を求めるのか? 業界も知らないその答え
著:Katherine Townsend(ノッティンガム・トレント大学、Reader in Fashion and Textile Crafts), Ania Sadkowska(コベントリー大学 Lecturer in Fashion)
ロックバンド「ブロンディー」をリードするデボラ・ハリー氏(72)は、昨年の新アルバム「ポリネーター」のツアーの中で、ヴィン・アンド・オミのコレクション「ストップ・ファッキング・ザ・プラネット」を身に着けて公演を行った。彼女のこの行動は、世代を超えて支持されるデザインの必要性を訴えるとともに、ファッションや老いに関する世間の常識にも挑戦するものだった。
幸いなことに、ダフィネ・セルフ氏(89)、ジャン・デ・ヴィルノーブ氏(72)、ローレン・ハットン氏(74)を始めとするベテランの女性モデルが、ファッションショーや広告キャンペーンにレギュラーベースで参加していることもあって、徐々にではあるが、年配女性はファッションの世界に欠かせないターゲット層になりつつある。
年配者の「洗練されたスタイル」への関心が世界中で高まっているのは、単なる偶然ではない。それを実際に支えているのは、「お洒落なお年寄り」である彼らベビーブーマー世代が持つ、潜在的に大きな購買力だ。
市場調査会社ミンテルによると、英国のレディースウェア市場では、若年人口の減少とともに、定期的に服を購入する55〜64歳の女性層が増加するという現象が同時に起こっている。だがそれだけではない。1946年~1964年生まれの人々がとりわけ特別なのは、彼らが60年代から70年代にかけて世界を席巻したカルチャー革命に実際に関わった世代だという事実だ。この運動は若者ファッションやファッションにおける男女のジェンダーイメージを大きく転換し、我々にとってなじみ深い現代の消費文化を生み出す基礎となった。