まさか!ミームの起源は学問にあり
◆爆発的な拡散性
今日我々が理解しているよう、インターネット・ミームとは、あるものがユーザー間で共有され、模倣され、別の形へと変えられていくという大衆文化である。インターネット上ミーム研究の第一人者リモア・シフマン氏は、ミームとは、SNS上で広がっていくあるアイデアや画像そのもののことではなく、互いに意識し合いながら創られていく一連の作品群のことであると主張している。かの有名なグランピー・キャット(Grumpy Cat)を例に取ると、あの猫自体がミームであるのではなく、あの猫の画像から作られた一連の作品群がミームであるのだ。
実のところ、ネット上に最初に現れたミームはアメリカの情報工学者スコット・E・ファルマン氏が1982年に生み出したあの横向きの笑顔 🙂 であった。記号を用いて感情を示すこの方法はすぐに世界中のネットユーザーに取り入れられ、:-( や 😉 といった別の表情もこの「顔文字」ミームのレパートリーへと加えられた。
インターネットがより一般に流通した1998年には、カナダの美大生ディアドラ・ラカルトがウェブサイト上で公開した、一列になって踊るハムスターのGIFイラストthe Hampster Danceが人気を博した。同サイトへのアクセスは1999年6月末までに1700万回に達し、その後the Cuban Boys作のキャッチーな楽曲やHampton the Hamsterによるリミックスも流行、同サイトを真似たものまで作られた。とてもシンプルなものであるが、このミームはデジタルコンテンツが爆発的に拡散した最初の一例である。
◆次世代のミーム
新たなタイプのミームが出現したのは、2000年代後半、インターネット上にペットの写真が溢れ返り出した頃であった。よく知られたものでは、Advice DogやLOLCats、そしてGrumpy Catが挙げられるだろう。擬人化された動物の姿というものは、古代エジプトの神々からピーターラビットのような子供向けの物語に至るまで、人類の文化の中にずっと見られてきたものであり、それがデジタル時代にミームという形で再度現れたことは特に驚くことでもないだろう。
また2000年代終盤には有名人や一般人を取り上げたミームも誕生した。Charlie Bit My FingerやKanye Interrupts、Leave Britney AloneにCash Me Ousside/How Bah Dahといったものである。こういったミームはメディアイベントや人気動画をきっかけに、耳の早いネットユーザーによってパロディや模倣作品の制作、リミックスやマッシュアップが行われて誕生したものだ。
ミームは時に政治的な考えやイデオロギーを伝えるために用いられることもある。漫画Boy’s Clubに登場するカエルのペペがオルタナ右翼勢力に用いられレイシズムのシンボルと化し、作者であるマット・フュリー氏自らの手により葬り去られるといった出来事もあった。
Meme Generatorといったサイトを利用し、辛辣なユーモア性を持つミームを用いて敵対する政治勢力の主導者やその主張の非合法性を訴えようとすることも可能である。こういった活動は、その成果にはばらつきが見られるものの、アメリカやイギリスでの選挙など大規模な政治的イベントにおいても広がりを見せている。
デジタルコミュニケーションの発展や変化と共に、ミームもまた進化し続けるだろう。しかし決して変わらないのは、互いに繋がり合い、共有できる文化を創り上げていきたいという人間の願いである。ミームとは何でもないもののように見えるかもしれないが、新たなメディアを通じて人々の想像力や創造性を高め、社会との関わりを強めることで、この文化の共有に貢献するものなのである。
This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by So Suzuki
- 1
- 2